富裕層には富裕層なりの苦悩があるのだとか。それは「いかに税金を取られず子供や孫に資産を残すか」ということだ。金持ちは驚くようなテクニックを駆使している。
今年1月から相続税が増税された。これまで相続税を払わずに済んでいた一般的なマイホームを持つ人にまで課税対象が広がったことはよく知られているが、一方で最高税率も上がり、頭を悩ませている富裕層も多い。そのため金持ちたちは納税額を少しでも抑えようと動き始め、いまは空前の「相続税節税」ブームとなっている。
多くの富裕層顧客を持つ都内の税理士は「今年に入って、数日しか休んでいない」と嬉しい悲鳴を上げている。それを反映したような記事が、9月7日付の朝日新聞に掲載され、話題になった。記事では、富裕層の間で使われている節税テクニックが紹介されている。
たとえば、関西の60代男性は税理士のアドバイスを受け、6億円で株式会社を作り、銀行から4億円借金して六本木や赤坂などのタワーマンション物件5戸を購入。その物件を所有する会社の株式を息子に贈与することで、6億円の財産を税金ゼロで実質的に息子に譲ることができたなどの実例が挙げられていた。
この記事に対しては「度を超えた節税指南ではないか」といった批判の声が相次いだ。
いま、富裕層を対象とする百貨店の外商部に問い合わせが殺到しているのが仏壇に置く「お鈴」だ。純金製や18金製のものが人気で、数百万円から1000万円以上するものまである。純金製のものは生産が追いつかず、「3か月待ち」になっている商品まであるという。
仏具などは税制上「祭祀財産」といって、相続税の対象外になるからだ。お鈴だけではなく、500万円ほどする 高さ約10cmの純金仏像なども飛ぶように売れている。
「数千万円の仏像を特注したいという相談もある」(業者)
ある税理士は、顧問先の自宅の仏壇がいくつものお鈴や仏像でキンキラキンになっているのを見つけた。こう話す。 「複数のお鈴、何体もの仏像は、死亡時にはすべてが非課税とは認められないでしょう。大きいものを1つにすればよかったのに……」
※SAPIO2015年12月号