秋の行楽シーズンで観光地はどこも混むが、西武観光バスのホームページに掲載されている「三峯神社線 大幅なバス遅延見込みのお知らせ」は普通ではない。平日でも人が多く、毎週末混雑している。例として11月1日の運行状況が示されているが、ふだんなら1時間15分の道のりに約8時間もかかっている。最終便では終電に間に合わなかったと注意書きがあり、ネット上でこの渋滞についてしばらく話題になった。なぜ、そんなに遅れたのか。
西武観光バス秩父営業所によると「奥秩父が紅葉シーズンを迎えるこの時期は、例年、ある程度は混むのですが、11月1日は特別」だった。西武秩父駅から三峰口駅、秩父湖などを経由し三峯神社を結ぶバス路線は、神社へ向かう車両で埋まり身動きが取れない状態になった。
「この路線は三峯神社の最寄りにある駐車場を目指してゆく一本道の往復です。秩父湖から三峯神社までは、う回路もありません。そのため、駐車場が満車になると駐車待ちの車で道路が渋滞します。また、駐車場から車が出ないと動けないため、何時間でも待つしかありません。増便して大勢のお客さんに対応する予定でしたが、11月1日は特に混雑がひどかったため、バスに乗車されたほとんどのお客さんが途中で下車して歩かれました。
奥秩父の紅葉シーズンということと、三峯神社が白いお守りを特別に頒布する1日が日曜日と重なったのでとくに混雑しました。今年はもう、あの日ほど混まないと思いますが全体的に混雑が続いています。紅葉を目当てに奥秩父へいらしたお客さんが予想外の混み方で驚かないように、というお知らせの意味でホームページに遅延状況を出しています。来年の11月1日は平日なので、今年のようにはならないと思いますよ」(前出・営業所担当者)
山犬(オオカミ)信仰でも知られる三峯神社の始まりは日本武尊の東国遠征にさかのぼり、もともと全国から多くの参詣者が集まる神社だった。ただし、標高1100メートルを超える山の上にあり、最寄り駅から約25キロ離れた場所にあるため移動手段が限られ、身動きがとれないほど大勢の人が参詣する状態ではなかった。ところが、数年前から参詣者の様子に変化が表れたと三峯神社権禰宜の山中俊宣さんはいう。
「山ガールがブームになったころ奥秩父連峰の入り口にある当社にも若い女性の姿が目立つようになりました。その後、ご朱印やパワースポット人気が高まるなどして、幅広い年代の方が大勢、参詣されるようになりました。一昨年の秋、タレントの浅田舞さんとスピリチュアル女子大生のCHIEさんが当社を訪れて紹介するテレビ番組が放映されてからは、とくにお詣りされるかたが増えたと感じています」