ガウディ計画編に突入した『下町ロケット』(TBS系)。本作は今田耕司(49)、立川談春(49)、春風亭昇太(55)、恵俊彰(50)ら“芸人俳優”たちの好演が話題を呼んでいるが、物語の舞台、佃製作所の経理部係長役を演じているお笑いコンビ、キングオブコメディの今野浩喜(こんのひろき・36才)もその一人だ。
同作出演の他の芸人に比べても一回り以上若い今野は、数々のドラマや映画に出演してきた売れっ子俳優でもある。最近では、ドラマ『ごめんね青春!』(TBS系)、映画『ヒロイン失格』などに出演。お笑いよりも俳優が本業なのではないかという活躍ぶりを見せているが、なぜ今野は、役者として重宝されるのか。
お笑い評論家のラリー遠田さんによれば、芸人が俳優として活躍するためには二つの条件を満たす必要があるという。
「一つ目の条件は、言うまでもなく演技力があるということです。お笑いのコントというのは一種の芝居ですから、コント芸人としてトップクラスの実力を持つ今野さんには、すでに役者としての資質が備わっていたのだと思います。実際に今野さんは、役に合った自然な演技をすることができます。
キングオブコメディの所属する人力舎といえば、古くはシティボーイズやB21スペシャル、現在もオアシズ、おぎやはぎ、アンジャッシュなど人気芸人を抱える芸能事務所です。コントに定評のあるグループが多く、キングオブコメディは事務所の先輩たちの系譜を継ぐ存在だといえます」
キングオブコメディの実力は、「キングオブコント2010」の優勝ですでに実証済みだ。コンビの名は同番組で一気に知れ渡ったが、コンビ歴は意外と長く、結成は2000年にまで遡る。結成後間もない2001年にキングオブコメディのライブを観たラリーさんによれば、当時からネタもキャラも出来上がっており、今野のセンスの良さは「早熟の天才」を思わせたと振り返る。
そして、二つ目の条件は、強い個性があることだという。
「今野さんの一番の個性は、何といっても顔面のインパクト。あれだけ際立っているとスクリーン映えするので、映画でもよく起用されています。阿部サダヲさんや温水洋一さんのように、そこにいるだけで空気を変えるような独特な存在感があって、サイコパスでちょっとヤバそうな役をやらせると『本当にヤバイ人なんじゃないの?』と思わせるくらいの不気味さがあります」(ラリー遠田さん)
確かに今野には独特な雰囲気がある。これまで演じてきた役柄も、ちょっとクセのある人物が多かった。ただ、『下町ロケット』で演じたのは真面目な会社員役。これまでと違った役でもハまるのはなぜか。
「今回は『こういうのもいけるんじゃないか』と期待されてのオファーだったと思います。その期待に応えられたのは、今野さんが“憑依型芸人”だからだと思います。役者にも通ずる話だと思いますが、芸人は素で勝負するタイプと、そのキャラになりきるタイプとに分けられます。今野さんは後者のタイプで、ライブでしゃべる時などは結構まともでクールなんですが、その役にどっぷりと入り込むのでものすごい爆発力を生み出します。ハまり役で一点突破することができるので、役者の仕事はどんどん増えると思います。ゆくゆくは主演に抜擢されてもおかしくないと思います」(ラリー遠田さん)
その時はどんな役になるのか。今後の活躍が楽しみだ。