波瑠演じる主人公・あさから1日の元気をもらえるNHK連続テレビ小説『あさが来た』。あさの父・今井忠興役を演じる升毅(59才)が裏ネタを明かしてくれた。
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忠興は「女、男、商売はこうあるべき」というルールを忠実に守っている男性です。ゆえに、「こらっ、あさ!」と、自分のルールから外れたあさをよく叱っていました。実は、このせりふ自体は台本に1回しか書かれていませんでした。
最初の撮影シーンで、「こらっ、あさ!」と言ったら、すごくしっくりきたんです。なんてシンプルで素敵な叱り方なんだろう!と。
それからも随所に叱るシーンがありました。「あさ!」や「こら!」だけではもったいないと思い、監督と話し合って、できるだけ「こらっ、あさ!」にさせてもらいました。
忠興は、厳しい一面を持ちながら心の中は人一倍優しさであふれた父親です。私はその優しさを無理に表に出そうとはせず、自然な演技を心がけています。「こらっ、あさ!」は少し意識しましたが(笑い)。
昨年の夏から演技のアプローチが少し変わったんです。『群青色の、とおり道』という映画の撮影で田舎の町工場の親父役をする際、佐々部清監督から「演技者として演技しないでください。自分なりに考えて演じようとしないでください」と言われたんです。
「演じないで演じるとはどういうことなのか」――かなり悩みました。監督の言われたことを体現しようと必死でした。そのおかげで自分がつかんだものがあり、今こうして、人間味のある頑固親父、忠興を演じられていると思っています。
※女性セブン2015年12月10日号