日本では多くの人が毛布の上に布団を掛けて寝る。「何をいまさら、当たり前のことを」と思う人もいるかもしれない。ところが、その常識が覆りつつある。最近、「今までの毛布・布団の使い方は間違っている」という“新常識”が盛んに唱えられているのだ。掛ける順序が逆で、布団の上に毛布を掛ける、いわゆる「上毛布・下布団」のほうが暖かい、というのである。
しかし、感覚的に「上毛布の方が暖かい」に納得いかない人もいるだろう。新説は本当なのか。睡眠環境プランナーの三橋美穂氏が説明する。
「かつて、日本の布団はほとんどが綿布団でした。綿布団は水分を多く含んでいるため暖まりにくく、毛布を下にするほうが暖かく感じます」
つまり、従来の「下毛布」は長く綿布団を使ってきた日本人にとっては理に適っていたわけだ。幼い頃は綿布団を何枚も重ねて寝ていた、という人は多いはずだ。敷布団のように重くてしっかりしているので、かまくら状に空洞を作り、その中で寝た。そのため肩口が寒く、丹前をかけて塞ぐか、毛布にくるまるかして暖をとった。
「ところが、日本でも羽毛布団が流通するようになると、それまでの綿布団の常識と海外から入ってきた羽毛布団の常識がごちゃ混ぜになった。その結果このような論争が起こったのではないでしょうか」(同前)
この「上」か「下」かは、素材にかなり左右される問題のようだ。オムロンヘルスケア「ねむりラボ課」の西口恵氏の話。
「素材によって推奨される順番は異なります。綿布団のほかにも、羊毛布団や合繊布団などは、従来どおり『下毛布』にしたほうが良いでしょう」