中国の経済改革を推進する最高決定機関である「中央全面深化改革領導小組(グループ)」の事務方ナンバー2の弁公室副主任に浙江省温州市トップの陳一新・同省党委常務委員兼同市党委書記が就任した。
陳氏は浙江省勤務一筋だったが、北京の中央組織の幹部に昇進するのは極めて異例。浙江省は習近平国家主席が2002年から2007年までトップを務めていたこともあり、習氏の意向が強く働いた“一本釣り人事”とみられる。
最近も中国共産党の外交組織トップに、やはり習氏が17年間も勤務した福建省出身の幹部が昇格しており、これも「習近平人事」であることは確実だ。
陳氏は1959年生まれの56歳。1982年6月に入党して以来、ずっと浙江省内で勤務し、浙江省政府の副秘書長や金華市党委書記を経て、2013年6月から温州市トップなどを務めている。
温州市は市場経済や私営企業の先駆けとなった都市で、1980年代には「中国の改革・開放路線の最先端モデル」と呼ばれることもあった。
温州は古くから商業が発達した都市で、温州人は中国全土で150万人以上が商業に従事するなど、「温州商人」の名前は広く知られている。また、海外に移住している温州人も多く、台湾に約10万人の温州人が滞在し、日本にも日本温州総商会と日本温州同郷会が存在するなど、フランス、イタリア、米国など計38万人が世界に点在している。
このため、習氏が浙江省で最高幹部を務めていたことと合わせて、陳氏が経済改革を担当する同グループの幹部に起用されたのではないかとの観測も出ている。
中国国営の新華社電は11月下旬、王家瑞・党中央対外連絡部長(大臣に相当)が退任し、その後任に宋濤・元外務次官(60)が就任したと伝えているが、宋氏も習氏と福建省勤務だった時期が重なっている。
宋氏は2001年ごろから外務省幹部として中央入りし、駐フィリピン大使などを歴任し、2011年に外務次官に昇格。2013年からは習氏が統括する外交政策の最高意思決定機関「中央外事工作指導小組」の弁公室副主任を務めてきた。
『習近平の正体』(小学館刊)などの著作があり、中国問題の専門家で、ジャーナリストの相馬勝氏は「習氏も2002年まで17年間にわたり福建省で勤務し、福建省長を務めた後、浙江省トップに転任していることもあって、今回の陳氏と宋氏の2人の人事には習主席の意向が強く働いたのは間違いない」と指摘している。