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中国で文革時代の革命劇復活 習氏は自らを毛氏になぞらえたか

『白毛女』という演劇が、中国全土で大々的に巡業されることになり、中国人民の間で複雑な反応が広がっている。なぜならこれは、中国の文化大革命時代に上演されていた「革命劇」の代表作だからだ。

『白毛女』のストーリーは、貧農の美しい娘が、国民党と関係のある悪辣な地主に暴行され、山に逃げて白髪になったが、共産党の八路軍に救出され、地主を打倒し、髪も黒髪に戻り、幸せに暮らしたというもの。「国民党支配下の旧社会は、人間を鬼(妖怪)にするが、共産党による新社会は鬼をも人間に変える」がテーマだ。

 文革時代に上演が許された8大革命歌劇の一つで、文革を経験した年齢層の人々にとっては、数百万人から1000万人以上ともいわれる死者を出した過去の嫌な記憶を呼び覚ます作品であり、再演に眉をひそめる者も少なくない。

『白毛女』の再演が決まったのは、習近平主席が1年前の文芸座談会で「大変に優れた劇で、いまもその価値は変わらない」などと絶賛したことがきっかけで、それを受けて演出を担当したのは習夫人の彭麗媛氏だ。彭麗媛氏は元軍隊歌手で“中国の歌姫”と呼ばれるほどの大スター。現在は人民解放軍総政治部歌舞団団長を務めている。

 ここで想起されるのが、文革当時に『白毛女』を演出していたのが、毛沢東夫人で映画俳優出身の江青だったという点だ。産経新聞中国総局特派員の矢板明夫氏はこう分析する。

「中国共産党の正当性をアピールすることが狙いだと考えられます。共産党がなければ、今も『白毛女』の時代が続いていたといいたいのでしょう。夫人が演出を担当することで、習近平に毛沢東のイメージをダブらせようとする意図もある。毛沢東のように、国民を解放させるのだと」

 習氏は自らを毛沢東になぞらえ、反腐敗闘争こそ、現代中国での文革だと位置づけようとしているのだ。

 気になるのは、習氏自身が実は文革の犠牲者だった点だ。父の習仲勲氏は共産党の幹部として国務院副総理まで務めながら、文革の前後16年間にもわたって拘束され、息子の習氏も地方に下放されていた歴史がある。文革の恐ろしさを身をもって経験したからこそ、その運動の絶大な効果を誰よりも知っているのかもしれない。

 1960年代後半に始まった文革は、「新しい社会主義文化の創成」を名目とする改革運動とされるが、実態は、大躍進運動で失敗し政権中枢を追われた毛沢東が、人民を扇動して政敵を追い落とし、復権するための運動だった。

 一方の習氏の反腐敗運動は、2012年の党総書記就任以来、精力的に取り組んできたテーマだが、恣意的に江沢民派や胡錦濤派の政敵を打倒するのが目的で、結局は権力闘争の一環に過ぎない点も、文革と似ている。

※週刊ポスト2015年12月18日号

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