11月27日、特別指名手配されていたオウム真理教・元信者の菊地直子被告(44才)に「無罪」が言い渡された。この判決に対し「怒りを感じる」と語気を強めるのは検察サイドだ。
今後、検察が上告して最高裁で争われる可能性も残っているが、菊地は判決後すぐに釈放されている。もし今後、無罪が確定したら完全に社会復帰するだろう。神奈川県に住む主婦(52才)は不安を口にする。
「本当に信者じゃないんですか? 洗脳は解けているんですか?
あの人が捕まったときも、もしかしたら近くにいたかもしれないとゾッとしたのに、無罪になったら、いつどこで会ってもおかしくないんですよね」
無罪が確定すれば、菊地には“復帰準備金”が支払われるという。検事時代にオウム信者を取り調べた経験を持つ落合洋司弁護士が語る。
「刑事補償という制度があり、無罪が確定すると、身柄を拘束されていた期間について、最大で1日1万2500円もらえます。当面はそれを生活費に当てて職を探すことになるでしょう。生活に非常に支障をきたすというのなら、家庭裁判所に申し立てをして、名前を変えることもできるのです」
補償金の額は、最低でも1日1000円、最高で1万2500円。菊地の場合、都庁小包爆弾事件での逮捕日が2012年7月15日、釈放日が2015年11月27日で拘束日数は1231日となり、仮に逮捕日から計算すると補償額は少なくとも123万1000円、満額ならば1538万7500円だ。
「無罪ならば、前科があるわけでもなく、住居や職業について制限されることはありません。信教の自由もありますから、宗教を申告する必要もない。ただし、オウム事件について社会的な非難はありましたから、菊地と知られれば生活に支障が出る場面もあるかもしれません」(大西総合法律事務所・大西洋一弁護士)
逃亡中も働き、生計をたてていた菊地。教団を脱退した元信者を支援する団体などもあり、それらに頼って生活する可能性も高い。家を借りるのも、知人や支援者に頼むこともできる。
1時間近くに及んだ判決の最後、裁判官は「法律的には無罪となりました。ただ、客観的には、あなたが運んだ薬品で重大な犯罪が行われた。あなたの行為が犯罪を生んだことを心の中で整理してほしい」と説論した。
それを聞いた菊地は、何度もうなずきながらハンカチで目頭を押さえるようなしぐさを見せたという。その行動が偽りない彼女の本心を映すものであってほしいと願うばかりだ。
※女性セブン2015年12月24日号