元プロボクサーで慶大法科大学院生だった小番一騎被告(25才)が、東京都港区の弁護士事務所で働く妻に肉体関係を強要したとして、上司の国際弁護士(42才)の局部を枝切りばさみで「切断」した事件。元凶は妻がついた嘘だった。
人が嘘をつく動機は「自己愛」「否認」「利得」と、大きく3つに分かれるという。
本当は語学が苦手なのに虚栄心から得意ぶったり、少しかかわっただけのプロジェクトを自分の成果のように話を盛ってしまう、などは“かわいい嘘”ともいえるが、出来心でついたプチ嘘にのみこまれて、引き返せないところまで堕ちてしまうケースもある。
「あえて言わない嘘もそうですが、女性は自分の身を守ろうとするあまり、本能的に嘘をつくことがある。恐怖に対する自己保身から、無意識に嘘のスキルが洗練されてしまうんです」とは、『自分のついた嘘を真実だと思い込む人』(朝日新書)の著書がある精神科医の片田珠美さん。
女性の嘘には他にも特徴があると語るのは、『愛着障害 子ども時代を引きずる人々』(光文社新書)の著書がある精神科医の岡田尊司さん。
「過去には『性的被害に遭った』という女性の嘘により、冤罪で相手の人生がめちゃくちゃになったケースがあります。虚言癖の始まりは、厳しい親に叱られないようにというのが多いですが、けがや病気をしたり泣いたときだけ優しくされたとか、大きな話をしたときだけ注目されたという体験から、嘘の快感を学習する場合もあります。ありのままの自分を認めてもらえない寂しさが背景にあります」
厄介なのは、大人になっても“嘘の旨み”が忘れられないタイプだ。
「嘘で周囲を動かす快感を味わうと、癖になる。気を引きたい、注目されたいと嘘をつき、例えば、自分を被害者にすることで、心が離れそうな夫の気持ちをつなぎ止めようとする。中には空想虚言といって、嘘を本当と思い込んでしまうこともある。この手の嘘を素人が見抜くことは難しいですね」(岡田さん)
小番被告の妻しかり、自己保身で嘘を重ねる女性が多い、と前出・片田さんも指摘する。周囲の状況の変化にかかわらず、自己の正当性を主張し続けた例として、元理化学研究所の小保方晴子さん(32才)のケースがある。
STAP細胞の論文について、研究不正と認定され、先月には博士号取り消しとなったが、早大に対して、代理人を通じて反論した。
「彼女は、研究不正があったと理研が発表しても、正当性を主張し続けた。あくまで憶測ですが、自己保身のためなら最後まで持論を貫き通すという自己愛の表れのように感じます」(片田さん)
次に、ネット社会の現代だからこそ生まれた、「ばびろんまつこ」の嘘。海外リゾートのバカンスに高級料理、ハイブランドのバッグなど、これでもかとツイッターでセレブライフを綴り、“キラキラ女子”として崇められた彼女。だがその末路は、詐欺容疑で逮捕されるというものだった。
「実際は無職なのに、『年収3000万円のハイパーエリートニート』を騙っていた。彼女が理想とする高収入の女性は、東京出身のお嬢様だったので、地方出身であることも隠した。SNSではいくらでも虚構の世界を作り出せますから。盛ることが嘘にすり替わり、その嘘と現実の落差を埋めるため犯罪に走ってしまったのでしょうね」
片田さんはそう語り、「SNSで承認されると、もっと『いいね!』が欲しくなり、自己演出に拍車がかかる。自己愛に由来する承認欲求と自己顕示欲が渦巻く世界で、誰もがばびろんまつこになる可能性を孕んでいる」と警告する。
※女性セブン2015年12月24日号