スポーツ

現役時の野村克也氏 田淵幸一氏を「こいつダメ」と感じた瞬間

捕手出身監督について語る野村克也氏

 2016年のプロ野球の3人の新人監督、高橋由伸(巨人)、金本知憲(阪神)、アレックス・ラミレス(横浜)はそろって外野手出身だ。野村克也氏は外野手出身の監督に名監督はいないと指摘する。外野手は考える習慣を持っていないからだという。それでは他のポジションの出身者はどうのか、野村氏が語る。

 * * *
 まず投手出身者は投手心理が理解でき、継投のタイミングがわかるという利点はあるが、彼らは基本的に「お山の大将」だから視野が狭い。現役中は打者と捕手しか見ていないのだから当然だ。

 その点、内野手はまだいい。横の連絡、外野との連携が必要なので、総合的な視野が広い。私が名監督と考えている三原脩(西鉄など)、水原茂(巨人など)、鶴岡一人(南海)、川上哲治(巨人)、西本幸雄(阪急など)の私が名監督だと考えている「5大監督」がすべて内野手であることを考えても頷けるところだ。しかし、細かい点を見ているという点では、やはり捕手の右に出る者はいない。

 捕手は監督以上の仕事をやっている。試合前から様々なデータを駆使して相手打者の分析をしているし、一度試合に入ればそれを元に、打者の反応を観察・判断して実行に移す。1球ごとに繰り返すこの作業によって、いかに「打ち取る」という答えに導いていくかが重要なのだ。この投手なら何点に抑えられるかという仮想ゲームを頭でやり、実際の試合を組み立てていく。捕手はいわば「脚本家」なのである。

 現に捕手出身監督は、ことごとく日本一になり、連覇も果たしてきた。上田利治、森祇晶、そして手前味噌ながら私。この伝統をぶち壊したのが、田淵幸一と大矢明彦だ。

 特に田淵は捕手の性格ではない。私は現役最晩年の2年間、西武で一緒にプレーしたことがある。田淵がレギュラーで私が控え。ロッカーが隣同士だったので、ある日の試合後、「なんであそこでストレートを要求したんだ。根拠は何だ」と聞いたことがあった。

 私は、捕手は「根拠のないサインだけは出してはいけない」と考えているし、どの球団でもそう教えてきた。試合中も右目でボールを受けて左目で打者の反応を見ろ、漫然とサインを出しているようでは捕手失格だ、理路整然と説明できるサインを出し、万が一それが打たれたなら仕方ない……そうやって考えに考えろと指導してきた。

 そんな私に、田淵から返ってきた言葉は、「イヤだなノムさん、投げているのは投手じゃないですか」だった。コイツはダメだと思った瞬間だった。

※週刊ポスト2016年1月1・8日号

関連記事

トピックス

吉本新喜劇の顔として活躍する島田珠代さん(撮影/井上たろう)
【吉本新喜劇の顔】島田珠代(54)が明かす「パンティーテックス」誕生秘話 「私のギャグは下品とは思っていない」「少女漫画のヒロインのように」の思い
NEWSポストセブン
登録者数80万人を超えるYouTubeチャンネル「みつともチャンネル」を運営する妻の幸巴さんと夫の光雄さん
《YouTuber年の差夫婦「みつともチャンネル」》“推し”の高校生アイドルとバツイチ男性が交際・結婚…妊娠した妻が振り返る「出会い」
NEWSポストセブン
NHK・東京アナウンス室の中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《裸に見える服》NHK中川安奈アナ、インスタ再開で見えた「フリーへの布石」突如出現したピンクのハートマーク
NEWSポストセブン
2
《2010年NHK紅白で『トイレの神様』熱唱の植村花菜》フルで9分52秒の名曲が7分50秒に縮小された理由「すべて歌えないのなら出場できなくても」
NEWSポストセブン
1986年 紅白歌合戦に急遽代打で出演した際の記者会見(時事通信フォト)
《布川敏和が語った還暦で『シブがき隊』再結成》解隊から36年「決定権はもっくんが握っている」「やっくんは同じ思い」の熱烈ラブコール
NEWSポストセブン
(写真提供/宮内庁)
〈伝統破りの経緯を宮内庁は説明せよ!〉とSNSで批判 秋篠宮一家が「半蔵門」を使用することは“不当行為”なのか 宮内庁は“問題ナシ”と回答
NEWSポストセブン
3人組「シブがき隊」もそのひと組。1988年に解散(解隊)後、俳優、タレントとして活動する布川敏和さん
《中森明菜が六本木のディスコで意外なおねだり》「元シブがき隊」布川敏和が告白「18歳で初めて助手席に乗せたのは小泉今日子ちゃん」、“花の82年組”の意外な距離感
NEWSポストセブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
【人生最後の取材】中山美穂さんが見せた孤独感…子育てのためにパリで引退決意も慰留「当初は会えていた」「離れていった母と子の心」創業事務所社長が明かす数々の恋愛と結婚生活
NEWSポストセブン
大谷翔平の伝記絵本から水谷一平氏が消えた(写真/Aflo)
《大谷翔平は「終わっていない」と言及》水原一平被告が迎える「一変したバースデー」“病気”で量刑言い渡しが延期中、真美子さんと交流あった妻は「絶対的味方」として付き添い
NEWSポストセブン
第1子妊娠を報告した大谷翔平と真美子夫人(時事通信フォト)
《真美子さんの前に『お〜いお茶』が…》大谷翔平が公開したエコー写真の米国事情、夫婦がシーズン中に見せていた“異変”「超速帰宅」「違う飲み物を口にして」
NEWSポストセブン
六代目山口組の餅つきに密着した
《六代目山口組の恒例行事・餅つき》「来いって言ってんだろ!アホんだら!」山口組“八代目”候補が声を荒らげた…「緊迫の一瞬」 PCR検査必須の厳戒態勢
NEWSポストセブン
自宅で亡くなった中山美穂さん
《『もう辞めたい』『私にはできない』中山美穂が泣いた日》14歳から39年見続けた“芸能界の父”が明かした素顔、「棺で眠る美穂はきれいでした」最期の別れ
NEWSポストセブン