施設の建て替えや改修工事に伴い首都圏のライブ会場が不足する、いわゆる「2016年問題」。今年は横浜アリーナが半年間、さいたまスーパーアリーナが3~4か月間、改修のために一時閉鎖されるほか、1000~2000人規模の会場でもすでに閉鎖、または閉鎖予定となっている施設が多い。首都圏のライブ会場不足は何も解決されないまま、2016年を迎えることになった。
この問題で今まさに悲鳴を上げているのは、音楽業界だ。いったいどれだけ深刻な問題なのか。音楽評論家の富澤一誠さんに話を聞いた。
「CDが売れなくなっている昨今、それをカバーしているのがライブです。アーティストは今、ライブで稼いでいると言っても過言ではありません。ライブ会場がなくなるということは、彼らの稼ぎ口がなくなるということ。そうなればアーティストは新しいチャレンジができなくなります。
アーティストにとって、モチベーションが上がらない状態でいい音楽を作り続けることは困難です。ライブには行かずに普段CDやネット配信で音楽を聴くだけという人も無関係ではありません。自分の好きなアーティストの新曲が聴けなくなる恐れがあるのです」(富澤一誠さん、以下同)
CDが売れなくなる一方で、ライブの入場者数、売上はともに好調だ。一般社団法人コンサートプロモーターズ協会によれば、同協会正会員によるライブの年間売上は2006年以降右肩上がりで、2014年には2010年の倍以上となる2749億円を記録している。音楽業界の黄金期ともいえる90年代後半が700億円前後で推移していたことを考えると、ライブの市場規模がいかに大きくなっているかが分かる。
富澤さんの言う通り、ライブができないとなれば、業界やアーティストにとっては大きな痛手だ。11月5日には日本芸能実演家団体協議会など10団体が会見を開き、改修時期の調整や代替施設の確保を訴えたが、その中にはサカナクションのボーカル、山口一郎(35)もいた。人気ミュージシャンがこの手の会見に出てくるというのは異例のことだ。
いったいなぜ、今になって問題が深刻化してしまったのか。
「本来はこうなる前に話をするべきで、今の段階ではもはや手遅れといえます。以前から問題として認識されていたにもかかわらず、行政や業界人、誰もきちんと考えていなかったのがいけなかったのでしょう」
しかし、手遅れだからといって、指をくわえて見ているわけにもいかないだろう。この先いったい、どうすればいいのか。
「改修にしろ建て替えにしろ、時間のかかることです。すぐにできる話ではない。となると代替となる施設をいかに確保するか、ということに尽きると思います。しかし数千人、1万人以上の会場は限られています。夏フェスなどの野外イベントを増やすことで、カバーしていくしかないと思います」
こうなったら2016年は、業界をあげてフェスブームを巻き起こすしかない?