2017年4月に消費税が10%へと引き上げられる際、「新聞」にかけられる税率が8%に据え置かれる方針が決まった。12月15日の自民党税調小委員会では、新聞への軽減税率適用に強い異論が出た。時事通信、日経新聞で9年間の記者経験を持つ山下雄平参院議員が次のような発言をしている。
「これまで食料品の議論をしてきたのに、(新聞への適用は)あまりに突然で論理の飛躍があります。
新聞の購読料が低所得者にとって相対的により重い負担になるという説明が財務省からありましたが、それならばなぜ電気・ガス・水道の料金は入っていないのか。それを言い出してはキリがないから食料品に限定するという政治判断だったはず。
食品のドタバタに隠れて『新聞が政治力を使ってゴリ押しした』と国民に映れば、現場の記者たちが後ろ指を指されかねない。活字を対象にするというならば、食品と同じように議論して国民に理解を得てからでも遅くはないはずです」
この発言に賛同した議員は多かった。山下議員は本誌取材に、「私の発言後に、『よく言ってくれた』と拍手が起きましたし、握手を求めてきた議員もいた」と答えている。
当然ながら各紙の記者はこの小委員会を取材している。〈15日の小委員会(総会)には、当事者であるはずの野田毅最高顧問ら3人が欠席〉(毎日新聞、16日付)などの記事があることからもわかる。しかし、山下議員の発言を報じた新聞は皆無だった。
権力を監視する役割を担うジャーナリズムの立場で軽減税率の恩恵を享受する以上、異論も含めて掘り下げ、自ら検証する姿勢が求められる。それを無視したことに、「自分たちだけ減税されてよかった」という本音が透けて見えるのだ。
※週刊ポスト2016年1月15・22日号