「どういうつもりなんだろうな、アレ。被害者遺族は今も地獄の苦しみを味わってるってのに」。年の瀬の12月30日。神奈川県川崎市のある住宅街で、地元の男性住人が呆れていた。彼の目線の先にあったのは、1つの戸建て住宅。玄関には来る新年に備えて、色鮮やかな「しめ飾り」が付けられていた。
この家は、昨年2月に同市の中学1年生、上村遼太くん(当時13才)を刺殺した主犯少年A(18才)の自宅である。
寒空の中、多摩川河川敷で“かみそんくん”の愛称で親しまれた上村くんを全裸で泳がせ、カッターナイフで首を何度も刺して絶命させたA。悪夢の事件から10か月を経て、Aの一家は“災い”を取り除くべく、しめ飾りを飾ったのだろうか。「そんな資格があるのか…」。近隣住人はそう口を揃える。
「母親はくりんくりんの付けまつげを付けて、化粧もバッチリして毎晩出て行ってますよ。父親も毎日仕事に行ってる。もうまったく普段と変わんない。事件後、あの家の塀はたくさん落書きされたんだけど、ちょっと消しただけで、そのまんま住んでる。他の加害少年2人の家族は、逃げるようにすぐに引っ越したのにね」(近隣住人)
昨年8月には、事件から半年経っているにもかかわらず、Aの両親は上村くんの遺族に謝罪すらしていなかったことが報じられた。
「シングルマザーだった上村くんのお母さんは事件後ずっと憔悴しきっていて…。痛ましい姿に、声もかけられなかった。夏前には兄妹を連れて横浜市内に引っ越しました。ここは息子さんを亡くした悪夢の地ですから。少しでも離れたかったのでしょう」(前出・近隣住人)
事件現場の河川敷には、月命日の20日になると、今も多くの人が献花に訪れる。当初は献花台が設置されていたが、昨年2月と4月に放火騒ぎが起き、6月末に市によって撤去された。
「でも、地元住人は“あの事件は絶対に忘れちゃいけない”って、月命日になると変わらず祈りに来ます。ボランティアグループが中心になって花壇を作って、パンジーやヒマワリも植えました。天国の上村くんに綺麗な花を見せてあげたいから…」(地元住人)
昨年11月には行政も動き出した。川崎市教育委員会は、子供の犯罪被害者・加害者双方の個人情報を警察と連絡しあう「学校警察連携制度」の運用を開始。上村くんの事件を教訓として、同じ悲劇を繰り返さないための公的な試みが始まっている。
年の瀬、女性セブンがAの自宅を訪れると、父親がインターホン越しに対応した。
「息子の面会には今も行ってるよ。どんな話をしてるかって? そんなのおたくらには言えないよ。おれはなんも話すつもりないから」
──上村くんの遺族には直接謝罪したのですか?
そう質問すると、一瞬の間の後、インターホンはブツリと切れた。2月2日、横浜地裁でAの初公判が開かれる。
※女性セブン2016年1月21日号