ベトナム、アフガニスタン、イラク……これまで幾度もの地上戦で多くの若者を失ってきたアメリカ。現在行われている「イスラム国」との戦闘では、大規模な地上部隊を派遣しない代わりに、無人のロボット兵器が“成果”を挙げている。戦地から遠く離れた米本土から、モニター越しに行う戦争。21世紀の戦場を一変させたロボット兵器はどこまで進化するのか──。
遂に人類は、最も危険な行為である“戦争”を代わりにさせる事を選んだ。無人機に武器を搭載したのだ。世界中がその対処に苦慮しているイスラム国(IS)。オバマ大統領は対ISで地上戦を行わないと公言しているが、攻撃を仕掛けていないわけではない。
2015年、米政府は後藤健二さんらを殺害したIS幹部であるジハーディ・ジョンを無人機プレデターで殺害したと発表。無人兵器で作戦を実行し、着実に成功を収めている。
米国はこれまで、地上戦で何度も痛い目を見てきた。ベトナム、アフガニスタン、そしてイラクで、大勢の若者が命を落とした。攻撃型UAV(*)を用いれば、戦地に大部隊を派遣することなく、遠く離れた米本土からモニター画面で戦争に参加できる。自分の手を血に染めることはなく、自宅から“通い”で戦争に参加できるのだ。
【*軍事用ドローンには、無人偵察機に代表されるUAV、自立走行可能な無人車UGV、海上を無人航行するUSV、海中を無人潜航するUUVなどいくつか種類がある】
ミサイルで空爆し、モニターに無数の死体が映し出されようとも、それは遠い別次元の世界。任務を遂行した後、子供を迎えに保育園に行ったり、年老いた親を病院へ見舞いに行ったり、恋人とディナーを楽しむことも可能だ。そして明朝、再び戦場へと“出勤”する。
だが自分の手を汚さなくとも、人を殺していることに変わりなく、PTSDになる操縦手も出始めた。そこで、最終目標として遠隔操縦をせず、人工知能を搭載し、自分で考え行動するロボット兵士が構想されている。
ロボット兵士は死を恐れない。不平も言わない。心を病むこともない。淡々と、最初にプログラミングされた命令を遂行する。そこには血の匂いが一切存在しないまるでゲームの世界のような戦場が広がっているだけだ。
※SAPIO2016年2月号