1月16日、台湾で蔡英文氏が初の女性総統に選ばれたほか、アメリカ大統領選ではヒラリー・クリントン氏が最有力候補と目されているし、ドイツのメルケル首相、韓国の朴槿恵大統領、ブラジルのルセフ大統領など、世界を見渡せば、女性政治家の活躍は当たり前のことになっている。
だが、日本では、安倍政権が盛んに「女性の社会進出」を唱えるのとは裏腹に、女性首相誕生の気配などほとんどないのが現状だ。
自民党政調会長を務める稲田朋美氏は安倍晋三・首相大のお気に入りで“将来の首相候補”といわれる存在だが、永田町で目立つのは政策よりも“ともちん”という愛称に象徴される男受けばかり。ある民主党議員の女性秘書がため息まじりにいう。
「地元名産だからと黒いレースの服を着ていることが多いですが、基本的に女としてのセクシーさを男性に対して強調するものじゃないですか。事実、同僚の男性秘書も“稲田さんって、近くで見るとセクシーで可愛いね~”とかいってヘロヘロになっていました(苦笑)」
もっとも、そうしなければ生きていけないのが、永田町という世界なのかもしれない。政治評論家の浅川博忠氏は指摘する。
「財務官僚時代に男たちを震え上がらせていた片山さつきさんさえ、政治家になってから様変わりしました。小泉政権の時に片山さつき、猪口邦子、佐藤ゆかりの3人の女性議員が話題になりました。猪口さん、佐藤さんの2人は有力議員の覚えめでたくなるように、それなりに媚びを売っていたが、片山さんは自分の力で政界内で力を示していこうとしていた。
しかし、その結果、大臣就任は猪口さんに先を越されてしまった。そんな現実を見たからか、片山さんもある時点から、周りに媚びる素振りを見せるようになった。あれだけのキャリア、力量があっても、有力男性議員に媚びないと地位を得られないのが日本の政界の現実なのです」
似たケースが、環境大臣になった丸川珠代氏だ。
「テレビ朝日のアナウンサー時代は報道番組で硬派な発言を繰り返していましたが、選挙に出た途端、街頭演説で“私、ニッポンが大好きなんです~”みたいな感じで、声のトーンまで甲高くなった」(自民党議員秘書)
国会議員バッジの魔力が、彼女たちを変えたのかもしれない。
※週刊ポスト2016年2月5日号