昨年、安保法制をめぐり、国会前ではデモをしたり、ハンガーストライキをする人々が登場した。しかしながら、安保法制が成立後、安倍内閣の支持率が上がるなど、皮肉な事態も発生。ネットニュースの専門家・中川淳一郎氏と、ネットに一切触れない評論家・呉智英氏がこうした動きについて話し合った。
中川:昨年は左翼の力が弱まった年だったと俺は認識しているんです。安保法制反対の国会前デモは、昔の学生運動のじいさんたちのただの同窓会になっていた。若いのが出てきたから、「奴らに媚びれば、俺たち、もう一回、青春を送れる」っていうくそじじいがいっぱい出てきちゃったの。
呉:そうそう。新聞や週刊誌の写真見てると、ああ、こいつ、こいつって、知ってるヤツがいっぱい(笑い)。
中川:元気そうだな、お前、みたいな。
呉:いや、ホント、国会前デモやっていたのとは別の、人権啓発とか部落解放とかの活動をしている若いのに話を聞くと、「年寄りにはうんざりしますよ」っていうんだよ。30年前、40年前と理論がまったく変わっていないって。なぜ変われないかというと、自分の居場所をそこに見つけて、メシも食っていけるし、自分のアイデンティティも確認できるし、他との理論闘争もないしで、安住できるから。
中川:ああ、なるほど。
呉:だけど、中川君は去年から左翼がうんぬんといったけど、俺は一昨年夏の朝日新聞の慰安婦虚報謝罪から、左翼衰退が顕著になったと思う。あの事件で、今まで左翼の理論は、すごい虚妄な理論やウソの事実のうえに乗っかって組み立てられていたということがわかっちゃったでしょう。
── 一方でSEALDsの登場が「リベラルの希望」といわれていますが。
呉:あれを取り込もうと思った段階でバカだよ(笑い)。あんなものは何の役にも立たない。大衆を利用する方法はいくらでもあって、毛沢東でもスターリンでもやっているけど、じゃあ、アジったら、あいつら武器もって国会に突入するのかよ。
中川:たぶん、「単位落とすぞ」っていわれたら、デモに来る数、激減じゃないですか?
呉:俺が住んでいる名古屋でもあちこちにビラが貼ってあったの。ビラじゃなくてフライヤーとか呼んでて、その辺も軟弱で嫌なんだけど、それに「何月何日、何々公園に武器をもって集まれ」って書いてあったの。俺は感動して、ついに機動隊に殴りかかるかと思って、よく見たら武器じゃなくて「楽器」だった。『Yの悲劇』かよ(笑い)。この冗談の解説は入れないように。
──了解しました!
※週刊ポスト2016年2月5日号