「勇気あるペンギンのことをファースト・ペンギンというんです」。五代友厚は、炭坑事業に挑戦するパイオニアのあさを集団の中で最初に海に飛び込むペンギンにたとえて、そう励ました。そのシーンをNHK連続テレビ小説『あさが来た』の名シーンにあげる人は多い。
五代は、薩摩藩に生まれた士族。欧州視察で培った国際感覚で大阪経済を復興させた実在の人物だ。『あさが来た』の熱烈な視聴者であるタレントの大桃美代子は言う。
「リスクを背負っても新しい事業を国のために行ってきた人。私は今の政治家に五代さんがいてくれたらと、思います」
劇中では、国際派イケメン俳優のディーン・フジオカ(35才)が好演。あさを仕事相手として尊敬すると同時に一途な恋心を抱く切ない役どころで、女性視聴者のハートをギュッとつかんだ。
五代の死は、NHKが1月初旬に発表していたが、1月22日の放送で実際に亡くなると、ショックを受けるファンの悲鳴がいつまでもやまないという異例の事態に。まるで身近な実在の人物が死んだよう。大桃もそのひとりだ。
「亡くなるシーンは直接描かれませんでした。『これからもまだまだやりたいことがたくさんある』とあさに力強く語るシーンが五代さんの最後の出番でした。いつまでも世の中に向かって闘うという五代さんのままで、私たちの前からいなくなりました。もうこれから登場しないなんて、信じられません」(大桃)
放送当日のツイッターでも深刻な五代ロスの声が続々とつぶやかれた。
《五代様何度見ても涙止まらない~死んでほしくなかった》
《あぁぁぁぁ五代様――寂しいなぁ》
《五代ロスが深刻すぎて駅に貼ってあったSuicaペンギンのポスターで泣いた》
1月22日の放送直後の『あさイチ』(NHK)では、有働由美子アナが涙を流しながら「元気になっていただきたいと思っていたのに…まだ心の整理がつかない」と、新たに始まった大河ドラマ『真田丸』でも埋まらない深刻な五代ロスをみせていた。五代ロスを私たちはどう乗り越えればいいのか。
「ディーンさんが出演中の『ダメな私に恋してください』(TBS系)を見ています。確かにイケメンなんですが…」(40代・主婦)
「大阪取引所(旧大阪証券取引所)前の五代友厚像に行って、聖地巡礼してきました。すてきだったのですが、やっぱりディーンさんの五代さんが…」(50代・パート)
それぞれの方法でロスを乗り越えようとしているが、一時の気を紛らす程度にしかならないようだ。
※女性セブン2016年2月11日号