昨年暮れに発表された厚生労働省「患者調査」の最新結果で、国内の糖尿病患者が316万人と過去最高を記録した。同省の別の調査では潜在患者も含む糖尿病患者数は約2000万人。もはや国民病ともいえる状況だが、実は糖尿病について正しい知識を持っている人は少ない。新たな研究から、従来信じられてきた“常識”すらも覆りつつある。
そのひとつが、糖尿病と地域の関係についてだ。一般的には糖尿病は飽食による贅沢病という印象があるかもしれないが、国際的に見れば糖尿病はむしろ貧困病といわれている。
国際糖尿病連合が昨年11月に発表した最新調査では全世界の糖尿病患者の4分の3は中・低所得国に集中しており、原因として低所得国では食事が安価な炭水化物に偏りがちなことなどが指摘されている。
日本では経済格差とは別の事情で地域によって糖尿病の深刻度が違う。都道府県別の人口10万人当たりの糖尿病による死亡者数には、かなりの地域格差があり、概ね政令指定都市がある都道府県は低値、その他は高値なのだ。
ワースト1位常連が徳島県。糖尿病死亡率は1993年以降、2007年を除いて全国最悪だった。2014年にもワーストを脱したが、10万人当たりの死亡率は14.9人で全国平均の10.9人を大きく上回っている。
徳島で糖尿病が多い理由を同県健康増進課は「車の保有台数が多く、歩く歩数が全国平均を下回っている。また、野菜の摂取量不足が背景にある」と分析する。
徳島大学大学院心臓血管病態医学分野の島袋充生特任教授は、「ご飯に砂糖をかける、すし飯にも砂糖を多く使用するといったような食習慣も影響しているのかもしれません」と語る。結局は生活習慣の地道な改善しか道はないのだろう。
関連してもう一つ。週末ぐらいゆっくり寝たいものだが、この「寝だめ」が糖尿病のリスクを高めている可能性がある。
米ピッツバーグ大学が30~54歳の健康な男女447人を対象にした調査から、平日と休日で睡眠時間差が大きい人は、空腹時インスリン値が悪化していることが分かった。日本糖尿病学会認定専門医の銀座泰江内科クリニック院長・泰江慎太郎氏が解説する。
「睡眠リズムが変わることで、食事も含め様々な生活が不規則になる。人間の体内時計を司るホルモンのメラトニンの遺伝子異常が、インスリン分泌異常、糖尿病発症を招くことも報告されています」
まずは身近な、できることから糖尿病にならない体づくりを心がけたい。
※週刊ポスト2016年2月5日号