日本国内のペットの数で猫の数が犬を上回りそうといった調査結果が出るなど、世は空前の猫ブームだ。しかし、高齢のおひとりさまや夫婦のみの世帯にとって、犬はやっぱり、癒しややりがいを与えてくれる重要な存在。
「犬は感情を持ち、すべての動物の中で人との距離が近い動物」と言うのは、東京農業大学の増田宏司教授だ。
「犬と暮らすことで、人は3つの効果を得られるといわれています。それは、身体的効果、精神的効果、社会的効果です。お世話などを通して健康になることや、癒しを得られること、ただ一緒に歩いているだけで、周囲の人とコミュニケーションを取れることなどです」(増田教授)
犬猫飼育実態調査(平成26年度版)によると、犬の飼育数は、猫を上回る。犬や猫の飼い主で最も多いのは50才代で、次いで60才代。犬は猫に比べてお金も手間もかかるが、愛着もそのぶん深まり、家族同然の存在になる。
風吹ジュン(63才)は、連続テレビ小説『あさが来た』(NHK)の撮影期間中、足繁く動物病院に通っていたという。愛犬のワイヤーヘアードが「老いのため内臓疾患を抱えており手術したから」(風吹の知人)だという。もともとは猫派だったが、撮影で家を空ける間、子供が寂しくないようにと、十数年前から飼い始めた。
2匹とも10才を超え、動きも仕草も若い頃とは変わり始めた数年前からは、「そろそろ時間がなくなってきた」と感じていると話していた。ドッグフードを野菜主体のものに変え、余分な油分を紙に吸収させてから食べさせている。そして現在も散歩は日課だが、体調のこともあり、抱っこした状態で出かけることも少なくないようだ。
しつけは想像以上に大変だが、それが時間のあるシニア層には新たな生きがいとなる。
現在は新作を書かず“充電中”の脚本家・橋田壽賀子(90才)はずっと猫を飼っていたが、80才を前に柴犬のさくらを家族として迎え入れた。1989年に夫を一緒に看取り、今はひとりと1匹で熱海での暮らしを楽しんでいるようだ。
犬は人間に寄り添って生きていくので、年を重ねる自分と犬とで、互いに老いを感じながらゆっくり流れていく幸せな時間を歩んでいくことができるのだろう。
野際陽子(80才)の愛犬は、コリーを小型にしたようなルックスのシェットランド・シープドッグ。夜は一緒の部屋で寝るという野際。朝は、その犬たちに顔をなめられて目を覚ますところから始まるそうだ。
※女性セブン2016年2月11日号