日本企業にとってまさに追い風といえる現在の歴史的な「原油安」。ニューヨーク原油先物相場では約12年ぶりの安値となる1バレル=26ドル台(1月20日)を記録した。シェール革命で米国の産出量が増えていることに加えて、経済制裁が解除されるイランの原油輸出が解禁されるのではという観測も、下落に拍車をかけた。
今のところ世界経済の混乱要因になっているが、日本経済には徐々にメリットのほうが波及していくことになるとDZHフィナンシャルリサーチのアナリスト、東野幸利氏が語る。
「原油安は国内企業や国内経済にとってプラスに働く。特に家計は自動車用のガソリンや暖房用の灯油の価格が下がるので、その分だけ別の消費にお金が回る可能性も増える。企業側では運輸業界や化学製品を扱う業界にメリットが大きいといえるでしょう」
どういった企業が業績を伸ばし、株価上昇が期待できるのか。東野氏がまず挙げるのが、塗料メーカーのアトミクスだ。
「駐車場や道路、家屋の屋根まで幅広い用途の塗料を扱う、業界をリードする企業です。原料となる原油の下落は大きなプラスです」(同前)
続いて挙げたのが丸和運輸機関。引っ越し業者の「桃太郎便」で知られる会社だ。
「燃料調達価格の下落に加え、物流センターの効率化に積極的で評価が高い。住友化学は、石油化学製品の分野で原料安の恩恵がある。さらに環境・エネルギーなど将来の高成長が期待できる分野へ積極的に投資していることも投資家にとってプラスの判断材料です」(同前)
原料価格が下がったことによる波及効果で恩恵を受けられそうな企業もある。
「ガソリンが安くなったことで、余ったお金でカー用品を買う人が増えるのではないかと見ています。中でも期待が持てるのが、カー用品のオートバックスを運営するオートバックスセブン。欧州やアジアへの進出にも積極的です」
追い風は味方につけるに限る。
※週刊ポスト2016年2月12日号