日本人の死因第4位である脳卒中。その中でも「脳梗塞」は年間約6万6000人の命を奪う病だが、意外とその症状や対処法を正しく理解している人は少ない。人が突然目の前で倒れてしまった──その場合は多くの人が気が動転してしまい、適切に行動できなくなってしまう。
人が突然倒れる原因はいくつもあるが、意識を失っている場合に考えられるのが脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)によるものだ。判断を誤れば後遺症が残るだけでなく、最悪の場合は死に至る。
今回は脳卒中の大半を占めるという脳梗塞を中心に取り上げ、いざという時のためにどう対処すれば良いかをシミュレーションする。
【倒れてしまったとき、動かしていいのか】
脳卒中の疑いのある人が倒れた時、その人を「動かしてはいけない」というのは古い常識である。正しいのは、倒れた直後は処置しやすい広いスペースを確保できる安全な場所に移動させることだ。その際は厚手のシーツなどを使い、担架のようにして静かに運ぶようにする。
もし意識が戻るなどして「大丈夫、自分で歩けるから」といわれたとしても、絶対に肩を貸したりして歩かせてはならない。立ち上がると脳の血圧が下がるため、脳梗塞だった場合、血管が詰まって低下している血流が更に悪化するおそれがあるからだ。
【声をかけたり、肩を叩いたりしてもいいのか】
目の前で突然人が倒れた場合、心配するあまり「大丈夫ですか!?」と肩を揺すりたくなる。しかし、体を大きく揺らすなどの刺激を与えてはいけない。東京女子医科大学客員教授の清水俊彦氏はこう話す。
「特別な理由がない限り、刺激を与えないようにしましょう。ただし、意識レベルを確認するために呼びかけて返答があるかどうかを確認することは必要です。意識はあるがろれつが回っていないのは、脳梗塞の典型的な症状です」
※週刊ポスト2016年2月26日号