厚生労働省によれば、65才以上の認知症の人の数は2012年の段階で462万人、2025年には700万人、高齢者の実に5人に1人が認知症になる見通しとなり、大きな社会問題になりつつある介護離職。
40~50代になれば、親の認知症に直面する人が出始めてくる。その時に大事なことは決して慌てないこと。それから情報を正しく知ること。遠く離れて住んでいるあなたでもできることがある。
会社には、介護を始めたことを即座に「報告」することが必須と言うのは、一般社団法人介護離職防止対策促進機構・代表理事の和気美枝さん。
「相談ではなく、報告です。相談だと特に初動は、かしこまってしまい、そもそも何を相談したらいいのかわからないので相談できないものです。
報告しなければいけない理由は2つあり、1つは“隠している”という気持ちがあるとそれがものすごくストレスになるから。介護はただでさえストレスが多いので、減らせるストレスは減らしてほしい。
もう1つは、介護をしているとケアマネさんや担当医などからの連絡がけっこうあるので、周りが知らなければ“勤務中に私用電話をしている”“しょっちゅう電話のためにトイレに行く”と見られ、ただの勤務態度の悪い人になってしまう。
でも、報告しておけば会社の側から“今後どういう働き方にするか”を相談してくれるし、会社にこんな制度があるということも教えてもらえます」
“報告”は直属の上司に行うのがいちばんだが、理解が得られそうにない相手なら、直接人事部に行くのも手だ。
こうして会社と調整しながら仕事と介護を両立させていくことになるが、そのためには仕事の密度も濃くしなければいけない。
「甘えずに、会社にいる限りは成果を出す。会社が目標数字を下げてくれたら、その数字を死に物狂いで達成する。そうするとすごく自信になるんです。介護は状況が変わるので、慣れてくれば短時間勤務を元に戻すことも可能になりますから」(和気さん)
最初の1年、2年は本当に大変だが、それを乗り越えれば道は開けてくる。
「転職を考えるのも1つの選択肢です。ただし、“すぐに転職できるだろう”と思って辞めるのは絶対にダメです。仕事ができる人ほど、選んでしまって、なかなか就職できませんから。
年齢が40才を過ぎていると正規社員での就職は厳しくなるし、今のお給料で転職することは無理。私は転職組ですが、給料が7分の1に下がりました。
額ではなく、プライドとしてそのお給料に耐えられるかどうか。私は特に守るものがなかったので、収入がどれだけ減っても“0よりはいいか”と思えたから何でもできた。でも、家庭のあるかたはそうではないので、“辞めないで”と言っているんです」(和気さん)
他ならぬ親のこと、精一杯のことをしてあげたいという気持ちは尊いものだが、専門家、経験者のみなさんの話からは、何より無理をしすぎないように――というメッセージが伝わってきた。
※女性セブン2016年3月3日号