不倫に路チュー、買春疑惑に暴言……。自民党議員に続出する醜聞のほとんどが、安倍自民が政権復帰を果たした2012年総選挙の初当選組によるものだ。宮崎謙介前代議士、中川郁子氏、武藤貴也氏もまたしかり。いまや自民党の「2012年問題」と呼ばれる始末である。
2012年に初当選した議員は116人。実は、彼らには国会で仕事がなく、暇を持て余している。落選経験のある自民党中堅議員はこう語る。
「数が多いと競争が激しくなるかというとそうでもない。与党が巨大化して議員数が多すぎると国会質問の機会はなかなか回ってこないし、政務官などのポストも枠が限られる。だから委員会や本会議の採決要員としか見てもらえないし、人数が多いから仕事しなくても目立たない。
自民党本部では毎朝8時から政調のどこかの部会が開かれていて、新人議員にとっては自分の力を試す場です。間違いを恐れずに発言して、ベテラン議員にやり込められて勉強し直したり、それをきっかけに役人を呼んで政策を勉強するチャンス。なのに、若手にはそういうことをしている議員は半分もいない」
若手の中には朝の部会に秘書を代理出席させて配られる資料だけを受け取ってこさせ、委員会がない日は昼頃に重役出勤する“ツワモノ”が少なくない。
国会の質問回数をみると、宮崎氏はこの1年でわずか2回だけ。
自民党が大敗した2009年初当選組と比べると違いが際立つ。この時に自民党から初当選したのは小泉進次郎氏などわずか4人で、質問の機会も多かった。小泉氏は自民党が野党時代の3年間に約30回の国会質問に立っている。国会で質問に立つには、事前に役所のヒアリングを受けて政策の問題点を整理し、質問書を作成するという手続きが必要だ。政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏が語る。
「自民党が野党時代、進次郎氏ら2009年組の1年生議員は予算委員会のテレビ中継が入らない日に交互に質問させられた。『議員数が少ない分、チャンスが多く回ってきた』と意気込んで国対委員長室の雑談スペースに資料を積み上げて一所懸命読んでいた」
2012年組とは政治キャリア、政策能力に大きな差がつくのは当然だろう。
※週刊ポスト2016年3月4日号