〈仁川空港リニアモーターカーが、開通式の試乗イベントで出発8分後に線路上で「ガタガタ」音を立て停止。恥をさらした〉
2月4日付の韓国・聯合ニュースはこう伝えた。
韓国政府は2006年10月にリニアモーターカーの実用化計画を決定し、開発に約10年の歳月と約400億円の事業費を投入してきた。リニアといっても、時速60~80キロで自動走行する都市型リニアだが、今年2月3日、“世界で2番目の商用化”を謳い、仁川国際空港駅から龍遊駅までの開通にこぎ着けた。
ところが、初日の試乗イベントでは出発8分で緊急停止してしまったのだ。原因は、制限速度35キロの区間を3キロオーバーして緊急停止装置が働いたからだという。その10秒後には運転再開して、その後は問題なく運行されたものの、自動運転なのに速度超過を起こしたことに批判が集中した。
韓国メディアが批判するのは、リニア計画が再三にわたって延期されてきたからでもある。当初は2007年開通を目指していたが、遅れに遅れ、試運転が始まったのが2012年8月。亜州経済の記事には、〈当時、なんと585件の欠陥が発見され、開通は無期限延期された。昨年12月の時点でも、20件程度が改善されずに残っていた〉(2月5日付)とある。
それからわずか2か月で運行が開始されたので、〈予想された“恥さらし”。世界2位を欲張ったと伝えろ〉(亜州経済)といわれるのだ。
なぜそれほど急いだのか。韓国に詳しいジャーナリストの河鐘基氏はいう。
「リニアの受注、開発を進めていた現代ロテム(現代自動車の系列)は、昨年、過去最悪の赤字を計上している。そのうえ、もし中国に先を越されれば、これまで費やした時間とお金が無駄になってしまうという危機感があったはず。だから、国際的な営業戦略上で、世界で2番目というタイトルを欲したと考えられます」
ところで、なぜ“世界で2番目”なのか。現在運行しているのは、愛知万博の「リニモ」のほかに、中国も2004年に浦東空港と上海間で開通しているので3番目のはずだが、中国のリニアは「ドイツの技術」「都市型でない」「運転士がいる」という理由でカウントしないのだという。逆に“2番目”でいいのか?
※週刊ポスト2016年3月4日号