待機児童問題が指摘されて早何年か。保育士も足りない、保育園も足りないなか、問題は解決していない。そんな中、「保育園落ちた 日本死ね!!!」と題した、はてな匿名ダイアリーへの書き込みが話題を呼んでいる。「日本死ね!」という過剰にも思えるつぶやきには、子供を抱えるママたちの本音がつまっている。ママたちにとっては深刻な問題だが、祖父母世代は首をかしげる。
「昔は子供が生まれたら仕事を辞めたし、保育園に早くから預けるくらいなら、仕事を調整すればいいんじゃないの?」(神奈川県在住の69才主婦)
もちろん、子供が成人するまでにいろんな未来を選べるほどの充分な資金があればそうしたい。多様化する価値観のなかで、女性が仕事をしなくとも孤立しない社会制度が整っていればそうしたい。しかし、ママたちを取り巻く環境はとにかく厳しいのだ。子育て・家族問題に詳しい、作家の石川結貴さんは言う。
「競争率が激しいといわれる世田谷区のお母さんの話ですが、彼女は子供を保育園に入れていた。よく入れられたわねと言うと、“理想を捨てれば入れますよ”って。他にも、“妥協すれば探しやすくなるのに”というお母さんもいましたし、競争率の低い地域に引っ越すという方法をとったお母さんもいました。そういうお母さんたちは、“保活が大変だっていう人は理想が高すぎる”と言うんです。園庭が広くて、家からも近くて、なんて叶わないっていうご意見もありました」(石川さん)
認可保育園の数を増やすのではなく、小規模保育園の数を増やす、ベビーシッターの数を増やすなどの提案が出されたり、社会学者・古市憲寿さんは著書『保育園義務教育化』(小学館刊)で、保育園を義務教育化することで、誰でも無償で通える制度を打ち出すなど、プランはいくつもあるのに、いずれも現実的に動き出してはいない。
「認可保育園は開園するのに法的な条件を満たさなければいけないし、最近では近隣からの苦情や用地確保など増設が難しい状況にあります。加えて、運営費用は相当なものです。以前、東京都の担当者に話を聞いたら、人件費や建築費などの経費をすべて含めたら、0才児1人当たり、1か月に50万円かかると言っていました。
保育園を作る、という方法以外に、男女問わず育休の確保や長時間労働の見直しなど根本的な問題解決も必要でしょう」(石川さん)
※女性セブン2016年3月10日号