ソフトバンクが2月15日に今後1年間で「上限5000億円」という大規模な自社株買いを実施すると発表したことは、市場関係者に大きな衝撃と期待をもたらした。
以降、自社株買いを発表する企業が相次ぎ、いすゞは3月末までに4500万株(600億円)、ラオックスは6月末までに最大2500万株(30億円)、ヤマトホールディングスは1000億円規模、フジクラも65億円を上限とする自社株買いを行なうという。これらの企業は自社株買いが好感され、いずれも発表直後に株価が急騰した。
現在の株価はPBR(株価純資産倍率)が1倍そこそこという非常に“割安”な状態で、企業にとって自社株買いの絶好のチャンスだ。それゆえ市場関係者の間には、「今年は企業の自社株買いが過去最高を記録するのは確実」との声も上がっている。マネックス証券チーフストラテジスト・広木隆氏がいう。
「リーマン・ショック後、日本では『借金は悪』という刷り込みによって“借金をして投資する”ことをしなくなり、経済がまったく成長しなかった。しかしマイナス金利によって負債コストが低下し、『借金すると得』という状況が生まれている。
企業が資金を調達する方法は株か借金のどちらかだが、今は株式で資本調達をするのはあまり効率的ではない状態。過去数年間のアメリカは、低金利で借金をして資本を買い戻すことが続いたため、結果的に株価が上昇してきた。日本でも同じことが起こると予想されます」
企業の自社株買いによって大きな恩恵を受けるのが株主だ。株式の総発行数が減るためROE(株主資本利益率)が上がり、大きな配当が期待できる。
また、自社株買いを行なうことは、将来自社株が値上がりすると考えている、つまり自社の将来の業績に自信を持っていることを示している。自社株買いを発表した企業の株価が上昇したのは当然のことだといえる。
「4~6月にはさらに多くの企業が自社株買いを発表し、それが日本株を一気に上昇させる要因になるだろう」(広木氏)
※週刊ポスト2016年3月11日号