山口組の顧問弁護士として名を馳せ、極道の世界の内幕を描いたベストセラー『悲しきヒットマン』の著者としても知られる山之内幸夫元弁護士(70)。現在は身を引いているが、彼はいま、山口組の分裂騒動をどう見ているのか。
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今、山口組が六代目側(組長・司忍氏)と神戸側(組長・井上邦雄氏)に分裂し、小さないざこざが頻発していますよね。そのたびにヒヤッとする。
僕は幸いにもどちら側からも信頼されている。だから、どちらにも言ってますよ。大きな間違いだけは起こさないでくださいね、と。今やってしまったら、取り返しのつかないことになりますから。
懇意にしていた竹中(正久=四代目山口組組長)さんや、宅見(勝=のちの五代目山口組若頭)さんが殺されたときも、何とも言えない気持ちになりましたもんね。なんと残忍なことをするんや、と。
誰かが殺されるのを見るのはもう嫌です。そのせいで、誰かが長い懲役刑に服さなければならなくなるのも嫌。神戸側の井上さんは一緒に仲よくカラオケを歌った仲。六代目の司さんもCDデビューしたことがあるくらいで二人とも、とてもうまいんですよ。演歌をよく歌ってましたね。
弁護士のままだったら、両者の仲裁をしたりとか、そこまではできなかったと思います。だから今は、ただの老人でいい。今の僕の夢は、分裂した山口組を、世間に迷惑かけぬよう、なんとかおさめることですね。
●やまのうち・ゆきお/1946年、大阪府出身。早稲田大学法学部卒。1972年司法試験合格。1984年頃より山口組顧問弁護士に。1988年、『悲しきヒットマン』を上梓しベストセラーに(のち映画化)。2014年末、建造物破損の教唆の罪で起訴され、2015年末、有罪判決確定。弁護士資格を失う。
※SAPIO2016年4月号