税法学者、経済学者、税理士らが「税制を主権者である納税者の手に取り戻そう」と昨年2月に発足したのが「民間税制調査会(以下、民間税調)」だ。三木義一・青山学院大学法学部教授(専門は租税法、弁護士)と水野和夫・日本大学国際関係学部教授が共同代表を務める。
民間税調は1年間の議論を経て、独自の「2016年度税制改革大綱」を発表。そこから浮かび上がったのは、日本の税制に隠された嘘だ。その一つが酒税で世界一高いビールを生んだデタラメだ。
税制は「酒の味」も左右する。税率が高過ぎるために、各社は税率が低い「発泡酒」「第3のビール」の開発に走った。
ビール酒造組合の公表資料をみると、日本のビール税の異常な高さがよくわかる。ドイツの20倍、米国の約12倍である。「税率を欧米並みにすれば、国民は1缶100円台のビールを楽しめるようになる」(三木氏)というのだが、なぜこんなにビールの税率は高いのか。
「ビール税が創設されたのは明治34年(1901年)。当時はビールが舶来の高級酒だったことから、“金持ちの飲む酒”として高い税率が課せられた。そして戦後、ビールが大衆酒になってからも“取れるところから取れ”と税率を高いままにしてきたのです」(同前)
消費税導入前の1984年、大蔵省主税局長は国会で「なぜビールの税率が欧米より高いのか」という質問に、こう答えている。
「我が国のように消費税の体系を持たない国では、どうしても酒税の税負担が高くならざるを得ない」
その後、1989年に消費税が創設されたが、ビールの税率は下がっていない。“取れるところから取る”というご都合主義がよくわかる。
※週刊ポスト2016年3月25日・4月1日号