熱戦続く春の甲子園(センバツ)、熱心な高校野球ファンなら昨年までとの“大きな違い”に気づいているのではないだろうか。そう、バックネット裏最前列中央にいつも陣取る「ラガーさん」がテレビ画面から姿を消したのだ。
蛍光イエローの帽子にラガーシャツ姿のラガーさんこと善養寺隆一氏(49)は、球場の8号門前に寝泊まりし17年間“特等席”をキープしてきた。
しかし、このセンバツからバックネット裏最前列は関西の少年野球チームの招待席(ドリームシート)となったため、ラガーさんは“指定席”を追われてしまった。
では、ラガーさんはどこへ? スタンドを見渡すと……いた! 長年彼が座ってきた「A73」から12席ほど三塁側の最前列「A85」に座っていた。
本誌記者が声をかけると、ラガーさんはまくし立てた。
「ど~も~! いや~、今日もいい試合ばっかりだね! ウン、高校野球最高! ここの席、俺気に入ってるよ。バッターの表情や捕手の動きもよく見えて、真正面より観やすいんだ!」
あれほどバックネット裏真正面にこだわっていたのに強がっているのでは?
「未来の球児のためなら喜んで譲りますよ。だって俺、テレビで目立ちたいわけじゃなく、高校野球が好きだから来てるんだもん。席が変わっても甲子園通いは止めないよ。今年の注目は打者なら常総学院の宮里豊汰、投手は敦賀気比の山崎颯一郎! よっしゃ、打て~!」
この席を確保するのも大変で、今でも「徹夜待機」は変わらないのだとか。取材の間にも、ラガーさんに握手や写真を求める人だかりができていた。もはやこの人、高校野球と「セット」の存在か。
※週刊ポスト2016年4月8日号