「CLUB The Courte」・なのさん
色気は売っても心までは売ってはいけない──こんな133の警句が並ぶ冊子が話題だ。大阪・北新地社交料飲協会の初代理事長(故人)が1980年に作った「ホステス心得帖」は昨年11月に再出版され、版を重ねている。男が読んでもためになる「お水の教科書」から、「お客様との対応」の章を紹介しよう。(全10回)
(1)お客様の名前は、一度で覚えること。一度覚えたら、3年間は忘れぬこと。覚える工夫としては、
a.繰返し名前を言いながら話すこと。
b.さりげなく名刺を頂くこと。
c.覚えるまで名刺をしまわないこと。
d.役職名を間違えぬこと。
(2)好みのお酒や嫌いなおつまみは忘れぬこと。2度目のご来店の時、注文のお酒の種類を訊くようでは、落第。
(3)前回ご来店された時の話題と、一緒に来られたお連れ様の名前を覚えていること。
(4)お客様の興味を示す話題に集中し、貴女の興味本位にならぬよう注意すること。
(5)お客様の顔をジロリと見ながら、席の前を通り過ぎないこと。挨拶、または微笑みを添えた会釈をしながら通り過ぎよう。席に座っていても、他席のお客様と視線が合ったら、視線だけで誠実な会釈をするとよい。
(6)ほとんどのお客様には、必ず、お目当てのホステスがいる。そのお目当てが貴女でなかったら、引き立て役に回ること。いつか貴女が引き立ててもらう時もあるのだから。
(7)お客様の服装・持ち物について、正確な値踏みができること。そして、それを少々オーバーに評価してみせること。但し、知ったかぶりをしてはいけない。
(8)お客様とお客様の関係を間違えぬこと。間違えたら、詫びても済まぬ場合が多い。信頼を築くのには時間がかかるが、怒らせるのは一瞬である。
(9)相手によって応対法を変えよ。賑やかなことが好きな人、静かに話すことが好きな人、黙って触ることの好きな人…色々である。ワンパターンの接待法では、お客様は飽きてしまう。
(10)お客様は、自分の何か(持ち物・人柄・仕事・容貌……その他あらゆるもの)について、それをいち早く認められ、ホステスに誉められたいものである。それが何であるか、早く見つけて、口に出し誉めること。貴女だって、お客様に同じ事をしてほしいではないか。イヤ味の無いお世辞は、人間関係を良くする。
(11)あとから席に着いたホステスに、お客様の名前を紹介すること。紹介されたら、ヘルプでも必ず名前を覚えること。
※週刊ポスト2016年4月8日号