失明原因の第1位、緑内障の患者数が2005年の約54万人から2014年には106万人と、約10年で倍増した(厚労省『平成26年・患者調査』より)。視野が欠損し、重篤になると失明の恐れがある緑内障。どんな治療法があるのか? 日本眼科学会認定専門医で「回生眼科」院長の山口康三氏が解説する。
「一度、失った視野を取り戻すことは困難と考えられていますが、不可能ではない。目の中の血流量を増やすことで、酸素や栄養分を視神経に行き渡らせ、神経細胞の機能を回復させることはできます」
眼球内の血液循環が悪いと血液はドロドロになり、毛細血管も劣化していく。栄養分を神経細胞に送り届ける能力が衰え、視神経の眼圧に対する“耐性”も弱まると考えられる。ならば、血流を増やせば改善されるというわけだ。
山口氏によれば、目の血行を良くする最もカンタンで、即効性のある方法が「5秒マッサージ」だ。眼窩を構成する骨のふちを5秒程度指圧することで、毛細血管を圧迫。指を離すと圧力が弱まり、多くの血液が目の周りの血管に流れ込み、目の中の血液循環が促進されるという。
マッサージの方法は、こうだ。眼球の周囲をなぞるように、上側は親指の腹で、下側は人差し指の腹で押す。痛みを感じない程度の強さで、5秒ほどかけて押し続けてパッと指を離す。これを3セット繰り返す。
さらに効果的なのがウォーキングである。
「歩いたり、運動することで、視神経乳頭の血流が良くなり、眼圧が下がることがわかっています。心臓から頭部に送られる血液量は安静時には1分間に1.4リットルですが、歩くことでその10倍の血液が送られる。頭部への血流量が増えると当然、目の血流量も増加します。血液循環が良ければ、目の神経機能は正常に保たれる。理想は1日1万3000歩です」(同前)
山口氏の指導で緑内障を改善させた患者の一人が松本公子さん(仮名・64歳)だ。3年前、緑内障と診断され、点眼薬やレーザー治療を受けたが症状は改善しなかった。当時、最高で左右の眼圧が30mmHg(正常値は10~21mmHg)を超えていたが、ウォーキングを軸とした運動を取り入れ生活習慣を改めたところ、2か月後に左右の眼圧が正常値内に収まったという。
「毎日歩き続けたことで、緑内障など目の病気が改善した患者さんは他にも多くいます。これまで約3000人の治療に当たってきた結果、体が健康になると目の病気も改善するという結論に辿り着きました」(同前)
※週刊ポスト2016年4月8日号