《目を伏せて空へのびゆくキリンの子 月の光はかあさんのいろ》
《慰めに「勉強など」と人は言う その勉強がしたかったのです》
《心とはどこにあるかも知らぬまま名前をもらう「心的外傷」》
2才で両親が離婚。小学5 年生の時に母親が目の前で自殺。入所した養護施設でいじめや虐待に遭い不登校に。施設を出て祖母や血のつながりのない人の家を転々とするも、その後ホームレスに。そんな何もかも嫌になってしまったある日、彼女は図書館で短歌に出合った。学校にも行かず、ろくに読み書きもできない。しかし、拾った新聞を辞書でひきながら読んで字を覚えてきた彼女は、短歌もほぼ独学で必死に学んだ。今では彼女の生きる光明となっている――。
最近、新聞やテレビでクローズアップされている“彼女”は、鳥居。自身の半生が綴られた伝記『セーラー服の歌人 鳥居』と、自身初の歌集『キリンの子』(ともにKADOKAWA アスキー・メディアワークス)が発売され、先日は『クローズアップ現代』(NHK)の最終回にも登場した。
女性セブンのインタビューに、鳥居はいつものセーラー服姿で現れた。
「小学校の途中で通学できなくなってしまった学校に行き、“もう一度学び直したい”と願う一方で、同じように学校へ行きたくても行けない子がいることの表現でもあるんですよ」(鳥居、以下「」内同)
その壮絶な半生から、暗く薄幸な女性像を勝手に想像していたが、実際は、大きな瞳をキョロキョロと動かしながらよく笑って、よく話してくれた。
「私の家族は虐待の家族でした。祖母が母に、母が私に、と。でも私は、祖母も母も恨んでいないんです。それぞれ一生懸命に生きたし、上手に子育てをしたかったし、最初から悪い人ではなかった。私は今でも家族が大好きです。この本を読んで、“この人は悪者”と簡単に切り捨てるのではなく、どうしてそうなってしまったのか、とか、家族を見つめ直すきっかけになればいいなと思います」
苦しくとも過去の体験を思い出しながら、短歌を紡ぐ鳥居。制作途中に倒れたり、その後高熱を出して寝込んでしまうこともある。それでも彼女は、今日も歌を詠む――。
※女性セブン2016年4月14日号