国交省は3月14日、「マンション標準管理規約」改正を発表した。この中で注目すべきは、これまで原則として「1戸1票」だった議決権が、同省の指針変更によって、住戸の資産価値に応じて重みが変えられるようになったこと。
簡単にいうと、広い部屋に住んでいる人ほどマンション全体の決めごとに関して決定権が大きくなる、発言力が強くなるということだ。例えば、25平米の部屋には1票、50平米の部屋には2票、100平米の部屋には4票といった分かりやすい分配が現実味を帯びる。
ほとんど周知されていないこの「改正」は、マンション住民に新たなトラブルを生む火種になる。
現在、新築マンションの購入者の4人に1人以上がタワーマンションを選ぶと言われている。それほど人気のタワマンこそが、今回の改正の影響をより大きく受ける。住宅ジャーナリストの榊淳司氏が指摘する。
「販売価格に応じて割り振られた場合、1階の3000万円の部屋と40階の3億円の部屋では、10倍も議決権に差が出ます。さらに厄介なのが、眺めのいい高額な部屋を買う人には、外国人が多いという事実です」
とりわけ東京・湾岸エリアのタワーマンションの高層階にある部屋は、中国人から利回りの高い投資対象として人気を集めている。オラガ総研代表取締役の牧野知弘氏が語る。
「話題の物件では、高層階の一番高い住戸から順番に、中国人投資家に売れていく傾向が見られます。デベロッパーの中には、都内でタワーマンションの販売を計画したときには真っ先にシンガポールに出向き、中国人相手に先行販売する業者も珍しくないほどです」
最上階はすべて中国人が所有するタワーマンションも存在する。彼らの存在感は、当然のことながら管理組合でも強くなる。
牧野氏の知人が暮らすタワーマンションでは、実際にこんなことがあったという。管理組合の総会に出席した中国人の住人が「このマンションの所有者の多くは中国人と聞いている。今後、総会で使う言葉は中国語にするべきだ」と主張したというのだ。
総会での会話だけでなく、マンション内の掲示板から日本語が消え中国語に置き換わるという日も、そう遠くないかもしれない。
「昨年は中国人にタワーマンションがよく売れた年ですが、今年から引き渡しが相次ぎます。この問題は、これから社会問題化していくでしょう」(榊氏)
※週刊ポスト2016年4月22日号