年々、アレルギーに悩まされている人は増えており、わが国のアレルギー罹患者は、今や人口の2人に1人という報告もある(2010年、厚労省調べ)。
その中でも代表的なのは食物アレルギーだ。これは鶏卵や乳製品、小麦などを食べることでじんましんが出てしまったり、呼吸が苦しくなったりするもので、主に小さい子供に表れると考えがちだが、昨今では、成人になって発症する食物アレルギーが飛躍的に増加しているという。
今なぜ、成人の食物アレルギーが増えているのか──。そもそも小児期に発症するアレルギーと大人になってからのそれとは、原因食物が大きく異なる。その発症は突然で、子供のときにアレルギーと無縁だった人も例外なく発症する。
しかし、その症状が多岐にわたることから、アレルギーと気づかない人も多いという。原因不明の不調に悩んでいたら、実はそれは大人のアレルギーかもしれないというのだ。
独立行政法人国立病院機構相模原病院が実施した2009年から2011年の患者調査によると、成人の食物アレルギーの原因食物は果物・野菜が最も多く、全体の約30%以上を占める。そのほかには、小麦、そしてかにやえびなどの甲殻類、スパイス、ナッツ、魚の寄生虫であるアニサキスの順で続く。小児の食物アレルギーの原因として頻度の高い鶏卵や乳製品は、成人では極めて稀であった。
さらに、成人の食物アレルギーの場合、原因となる食べ物によって、アレルギーの発症メカニズムも異なる。
成人になって発症する食物アレルギーの発症メカニズムは、食べることによって発症する『経口感作』と、皮膚や粘膜のアレルギーから始まる『腸管外感作』の2つに分かれる。
『経口感作』の代表は、小麦によるアレルギーだ。成人の小麦アレルギーは、乳幼児の場合と違い、小麦を食べるだけでは発症しないことが多い。小麦を食べた後に運動した場合にのみアレルギーが起こる、『食物依存性運動誘発性アナフィラキシー』という特徴的な病状で発症する。皮膚に発疹が出たり、血圧が下がったり、重症の場合は呼吸困難になることもある。
アレルギー疾患の専門医・福冨友馬さんによると、食後すぐに運動することで、小麦に含まれるアレルゲンの吸収を高めてしまうことが原因だと考えられるという。
「運動が激しいものでなくても、アレルギー症状が起きることがあります。普段から小麦を多く摂取している人は、特に注意が必要です」(福冨さん。以下「」内同)
もう一方の『腸管外感作』の代表は、ヘルシーな食べ物だと思っていたはずの、果物や野菜が引き起こすアレルギーだ。
「りんご、もも、さくらんぼ、なし、びわなどのバラ科の果物や、大豆でアレルギーが発症することが多いのです。大豆は、納豆やみそ、しょうゆといった大豆製品では平気でも、加工の程度が低い豆乳などで症状が出てしまうことがあります」
また、豆乳などの大豆製品を食べてアレルギー症状が出たことがなくても、りんごやももなどの果物でアレルギーを発症した場合は、今後豆乳などによるアレルギーを新しく発症する危険性が高まる。
※女性セブン2016年4月28日号