春のセンバツが閉幕しても、高校野球がメディアを騒がせている。東京都春季大会(4月1日開幕)で早稲田実業の清宮幸太郎(16)が快音を響かせたからだ。怪童は昨夏からどれぐらい成長したのか──。
全国の地区予選を詳報するなど、どこよりも高校野球情報を網羅するインターネットサイト『高校野球ドットコム』の副編集長で、「高校野球博士」の異名を取る河嶋宗一氏が、清宮の「現在点」をレポートする。
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冬の間、清宮はじっくりと体を作った。本人は「筋肉が付き過ぎて体が重くならないように気をつけた」というが、それでも、スクワットやベンチプレスなど筋力トレーニングで自らを徹底的に追い込み、体重は2kgほど増えたという。
体幹も強くなったことで、バッティングは1年前より確実に進歩した。彼は足を高く上げるため、大きな反動をつけて打っているように見えるが、上半身のブレがなく、インパクトまで最短距離で振れており、振り遅れも少ない。
3月25日には、強豪校との練習試合が組まれた。福島県の聖光学院と栃木県の佐野日大という、いずれも甲子園常連校である。
聖光学院戦では、第3打席に特大のホームランを打っているが、私が注目したのは第2打席。インコースのボールを詰まりながらもセンター前に運んだ技術に驚いた。聖光学院の斎藤智也監督もこう振り返る。
「彼は左肘の使い方が非常に上手い。左肘を脇の下に綺麗に畳みこむことで、インコースの厳しいボールも、フルスイングして打ち返すことができる」
私が見る限り、清宮は打つ直前に引っ張るか逆方向に流すかを決めている。それは左肘の使い方が天才的で、ボールをギリギリまで引き寄せられるからだ。
続く、佐野日大戦では第4打席。4球目をフルスイングすると、打球はピッチャーの足元をすり抜けセンター前に転がった。佐野日大のピッチャーがグラブすら出せないほどの高速打球だった。
もともと彼のスイングスピードは高校生のレベルではなかった。中学2年生の時点で、すでに大学生並のスピードを持っていたが、冬場の厳しい練習を乗り越え、一段と速くなった。
ボールを水平に捉えるレベルスイングのため、フォロースルーが小さい点を指摘されたこともあったが、昨秋以降、改善に取り組んだ。最近はフォロースルーが大きくなり、ボールをバットに乗せるだけでスタンドインするような感覚になっているはずだ。
●かわしま・そういち/「高校野球ドットコム」副編集長。年間300試合以上の高校野球を観戦し、確かな目で選手を分析する。球児から「高校野球博士」や「スカウト部長」とも呼ばれている。高校野球にまつわるあらゆる情報を集約している高校野球ドットコムにて、強豪校の練習や注目の球児についてコラムを執筆中。
※週刊ポスト2016年4月22日号