4月14日夜9時26分に熊本で発生したM6.5、最大震度7の大地震。益城町を中心に甚大な被害を出した。しかし、悲劇はまだ終わっていなかった。16日未明1時26分に発生したM7.3、最大震度6強が起こったのだ。後に、16日に起こった地震こそが本震であることが報告された。
本震と思われた大きな揺れが、実は前震だった…これは気象庁の担当者が会見で「今までの経験則から外れている」と語った事態だ。今回の地震が今後どんな影響を及ぼすのか。非常に不気味である。
元東京大学地震研究所准教授で国立研究開発法人建築研究所特別客員研究員(歴史地震学)の都司嘉宣さんは、
「地震の活発な地域が、中央構造線沿いに“玉突き事故”のように東の方角に延びていく可能性がある」
と指摘する。中央構造線とは、熊本から大分を通り、四国、近畿を横断して長野県の諏訪湖周辺、さらに関東平野へと延びるとされる長い大断層だ。過去にも、この中央構造線沿いに地震が続いたケースがあると都司さんは言う。
「1889(明治22)年にも熊本で大きな地震が相次ぎ、その2年後に大分県別府湾の入り口でM6.3の地震が発生しました。今回も愛媛県と大分県の間にある豊後水道のあたりまで地震活動が拡大し、そこで別の本震が起こる可能性がある。豊後水道の愛媛県側には伊方原子力発電所があるので心配です」(都司さん)
地震はさらに東に延びる可能性もある。1596(慶長元)年に別府湾から愛媛県の松山にかけて大きな地震(慶長伊予地震)が起こり、4日後に近畿地方全体を大地震が襲った(慶長伏見桃山地震)。その被害面積は阪神・淡路大震災の3倍にも及んだという。
「30年以内に70%」の確率で起こると推計されている「南海トラフ地震」への影響も考えられる。
南海トラフとは、フィリピン海プレートがユーラシアプレートに潜り込む部分にある地震発生帯のことで、M9の地震が起きた場合、東京から沖縄にかけ、推定死者は32万人と試算されている。立命館大学歴史都市防災研究所・環太平洋文明研究センター教授の高橋学さんがこう警鐘を鳴らす。
「今回の熊本地震は西日本一帯が乗っているユーラシアプレートが、その下に沈み込もうとするフィリピン海プレートに押されたひずみで生じたもの。中央構造線に沿って東に移動して地震を起こしたり、ひずみに耐えきれなくなったユーラシアプレートが跳ね上がって、南海トラフ地震を引き起こす可能性は充分考えられます。この3年の間にも起きるのではないか」
過去にこんなケースがあった。1611年に東北で大地震(慶長三陸地震)が発生し、津波が三陸地方を襲った。その8年後と14年後に熊本で2つの断層地震が発生。そして1633年、小田原を中心とした関東の都市型直下地震(小田原地震)が発生した。
同様に、今回も東北、熊本、そして関東へと大地震が波及したら…熊本地震はさらなる大災害の不気味な前兆かもしれない。
撮影■渡辺利博
※女性セブン2016年5月5日号