測量学の世界的権威である村井俊治・東大名誉教授の「MEGA地震予測」は、自身が顧問を務める民間会社JESEA(地震科学探査機構)が、メールマガジンなどで展開する予測法だ。全国の「電子基準点」のGPSデータから地表のわずかな動きを捉え、地震発生との関連を分析する。
熊本での大地震を受け、今後の警戒ゾーンはどうなるのか。最新のGPSデータとともに見ていく。まず村井氏は、最警戒ゾーンとして「首都圏・東海警戒ゾーン」と「南海・東南海警戒ゾーン」を挙げた。
■首都圏・東海警戒ゾーン
3月前半、父島A、母島など小笠原諸島の5か所の電子基準点にいずれも5cm超の異常変動が見られた。特に南鳥島では13.4cmという非常に大きな動きを記録している。
「この後、4月3日に南太平洋のバヌアツ諸島を震源とするM6.9の大きな地震がありました。異常変動はその前兆であり、すでにエネルギーが放出された可能性は否定できません。
しかし、昨年5月初めに小笠原諸島で同様の一斉変動があった後の5月30日に、首都圏で震度5強を記録した小笠原諸島西方沖地震が起きている。今回、同様のことが起こらない保証はない。引き続き警戒を続けるべきでしょう」(村井氏、以下同)
長期的な隆起・沈降を見ても首都圏・東海ゾーンは注意が必要だという。
「小笠原諸島が沈降を続けている一方で、関東の内陸部は隆起傾向にある。また沈降を続けていた駿河湾沿いも、最近になって一転して隆起が始まっている。関東の地盤の歪みは各所で大きくなっているので注意が必要でしょう」
■南海・東南海警戒ゾーン
大地震が発生した熊本・大分から豊予海峡、四国、紀伊半島中南部へと延びる活断層「中央構造線断層帯」があることから注視されているエリアであり、村井氏の理論でも危険な兆候が見られている。
「私は地震学者ではないので活断層のことは論じられませんが、電子基準点の水平方向の動きを見た際、四国の瀬戸内海側が南東方向に動いているのに対し、室戸岬や足岬など四国南端は逆の北西方向に動いている。
隆起・沈降でも四国南端は沈降が大きく、周辺と違う動きを見せている。また、日向灘対岸でもこれまでの沈降傾向が隆起傾向に変わってきた。ゾーン全域で警戒が必要です」
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※週刊ポスト2016年5月6・13日号