100平方メートルを超える広大なビニールハウスの中で、腰をかがめて小松菜を採る老女がいる。もんぺは土で汚れ、ほっかむりに汗が伝う。15代続く農家だという。
「まぁ、わざわざ東京から…。娘はいま家で休んでおります。本当によく頑張ったから」
畑仕事を中座したひと時、女性セブン問いかけに応じたこの女性は、北斗晶(48才)の母親だった。都心から電車で1時間。埼玉県東部の田園地帯に北斗の自宅がある。実家はわずか50m先。母娘は結婚後も離れずに暮らしてきた。
北斗が乳がん手術を公表してから半年。術後治療にひと段落ついた彼女は今、自宅で夫・佐々木健介(49才)と2人の息子と過ごしている。
「心配させたくないからって、あの娘は私の前では一切弱音を吐かないんです。今だって不安で、つらいだろうに…。見えないところでしか泣かない。強い娘だから」(母親)
副作用に苦しんだ壮絶な闘病生活、北斗を支え続けた健介の献身…。母親は全てを間近で見てきた。
昨年9月、乳がん手術で右の乳房を全摘出した北斗は、同11月より都内病院に入退院を繰り返し、抗がん剤治療を受けていた。この日、計9度の投薬計画をようやく終えて自宅に戻った。北斗の母親が明かす。
「胸の周りとリンパも全部取ったんだけど、転移があったら怖いから。強い薬を使ったんです。副作用がすごくってね。髪の毛がどんどん抜け落ちて…。でも、あの娘は“かあちゃん、心配しないでいいよ~”って。髪のなくなった頭を触りながら、無理して笑うんです。もう胸が痛くて、見ていられなかった。今だって、代われるもんなら代わってやりたいです」
副作用は脱毛だけではなく、強い吐き気、全身の倦怠感や味覚障害が断続的に北斗を襲った。強すぎる副作用を見かねて医者が投薬量を減少させたため、当初8回の投与計画が9回に延びたのだという。
「乳がんだって聞かされたのも、手術で入院する前日でしたから。“かあちゃん、明日から入院するわ”って。どこが悪いのかと思ったら、まさかがんだなんて…。この世で健介だけですよ。娘から全てを打ち明けられていたのは」(母親)
※女性セブン2016年5月12・19日号