幸薄美人の役が誰よりもはまる女優、木村多江(45)。現在出演中のNHKの朝ドラ『とと姉ちゃん』でも、主人公・常子の母・君子は物語の序盤で未亡人になってしまった。三人の娘を育てながら家計をやりくりする苦しい生活が続くが、なぜこうも幸薄美人の役が多く、またそれにうまくはまるのか。
ドラマ評論家の成馬零一さんはその理由をこう述べる。
「ドラマ『リング~最終章~』(1999年、フジテレビ系)で貞子役のインパクトが強く、その頃から不幸な役が多いですね。年齢を重ねるとともに母親の役も演じるようになり、映画『ぐるりのこと。』(2008年)では、生まれたばかりの赤ちゃんを亡くした主人公を好演しました。
顔が薄いところが、幸薄役にはまっている理由の一つだと思います。また、体の線が細いので、まだ貧しかった頃の昭和の日本的な女性の感じもうまく出せる。『ゼロの焦点』(2009年)でも未亡人役を演じていました」(成馬さん・以下「」内同)
木村は『ぐるりのこと。』で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞をはじめ数々の賞を受賞。『ゼロの焦点』でも同賞の優秀助演女優賞を受賞している。ただ、『とと姉ちゃん』での役がそれらと違うのは、娘3人を女手一つで育てていかなくてはならないことだ。そこでは「生き抜く強さ」も見せなければならないが、「線の細さ」がマイナスにはならないだろうか。
「『とと姉ちゃん』のメイキング番組で、主人公の常子を演じる高畑充希さん(24)は、常子がヒロインというよりも小橋家の母子4人がヒロインだということを話していました。母だけがたくましいというよりも、4人それぞれが役割分担をしながら、家族全員で生き抜いていく物語。お父さんの代わりになろうと奮闘する常子たちを、君子は母親として、優しく包むようにして守っていくと思います。
線が細いというのは、必ずしも弱さだけを表すとは限りません。痩せていても本当に弱い人ではない。内面に宿る『芯の強さ』を見せることができます」
木村は21才の時に父親(享年49)を亡くしていている。また、36才の時には長女を出産した。そうしたさまざまな経験が、内面の強さを作りだしたのかもしれない。40代後半に入り、これからどんな女優になっていくのか。
「20代30代の頃は、ドラマに出ても地味な印象で埋もれてしまうことがありましたが、母親役をやるようになってから、印象に残る女優さんになったと思います。『とと姉ちゃん』の印象も強いので、今後はしばらく母親役が続くかもしれません。着物が似合うので時代モノもはまると思います」
朝ドラは好視聴率が続くが、このまま“幸を運ぶ女優”になれるか?