民泊問題は日本にとっての試金石となる
世界的に急速に広がる「民泊」。一方でトラブルも少なくない。利用客による民泊のマナーが問題視されるいま、住人たちがマンション管理組合の議決として、「民泊禁止」を打ち出すことが増えている。中国人観光客らが高級タワーマンションの住民用歓談スペースで、夜な夜なドンチャン騒ぎをし、ゴミも片付けないといった行為も報告されている。これでは、購入者にとっては「資産価値が落ちるのでは…」といった懸念も出てしまう。
東京湾岸地区に位置する高級高層マンション「ブリリアマーレ有明」は問題点をいち早く認識し、先手を打った。2014年に管理組合総会の議題となり、民泊禁止条項を書き加えたのだ。悪質な場合は不法侵入として警察への通報も辞さない構えだ。管理組合の1人がいう。
「多くの共有施設があるマンションでもありますし、資産価値を守る意味でもルールを定めました」
記者が民泊で宿泊した新宿のマンションの管理組合も、「貼り紙では効果がなかったので、民泊利用目的の疑いがある中国人契約者には不動産会社を通じて解約するように文書を送っている」と語気を強める。すでに3件の解約があったという。
それでもトラブルはなくならない。部屋の契約者を問い詰めてもシラを切られることが多いからだ。
「『友達が来ている』『親戚だ』と主張する人が多い。そう言われてしまうと我々も強く出られない」(同前)
もはや民泊は世界的にはスタンダードな旅行宿泊スタイルであり、料金を払ってマナーも守っている利用者にとっては問題視されることは心外だろう。現在は民泊の制度的な位置づけが定まっていないため、利用者と住人たちとの間で混乱を招いているという側面もある。
民泊問題は、今後、外国人を日本がどう受け入れていくかの試金石といえる。
※週刊ポスト2016年5月20日号