東芝の不正会計、シャープの買収、セブン&アイのお家騒動や三菱自動車の燃費偽装などを通じて、経営者のリーダーシップやマネジメント能力が改めて問われている。
そこで、『週刊ポスト』では、経営評論家、経済ジャーナリストなど21人と匿名の経済記者数人に、故人を含めて「彼こそ名経営者」といえる人物トップ3を挙げてもらった。
圧倒的な得票で1位に輝いたのは、「経営の神様」と呼ばれる松下幸之助(1894~1989)だ。松下電器(現・パナソニック)の創業者で、1代で世界規模の企業に育て上げた戦後の日本経済の立役者である。
製品を「水道の水のごとく安価無尽蔵に供給して、この世に楽土を建設する」ことが松下の使命だとする「水道哲学」や、「事業は人なり」といった彼の理念は、後続の経営者に大きな影響を与えた。双日総研チーフエコノミストの吉崎達彦氏がいう。
「1932年5月5日、松下幸之助が当時の全店員168人を前に、初めて『水道哲学』を語った大阪の中央電気楽部のホールは、いまも現存しています。その時は社員みんなが感動して『私にもひと言いわせてください』と壇上に上がる盛り上がりだったそうです。私も2度ほどそこで講演をしたことがありますが、あのホールに行くといまでも当時の雰囲気が伝わってきます」
引退後の1979年には松下政経塾を創設し、政治を通じての社会貢献に尽力した。