「庶民の味」として長年親しまれてきた青いソーダ味のアイス、「ガリガリ君」が海を越えアメリカで話題になっている。
5月19日、ニューヨーク・タイムズが「棒アイス値上げで日本国民に謝罪」と題し、ガリガリ君が4月に「10円」値上げしたニュースを1面で報じたのだ。これには大のガリガリ君愛好家である経済アナリストの森永卓郎氏も喜びの声を上げる。
「NYタイムズの1面に日本のニュースが掲載されることはとても珍しい。ガリガリ君が『日本文化の象徴』として認められたということではないでしょうか」
だがこの記事、よく読んでみるとその「扱われ方」にどうも違和感を覚える。記事では、値上げについてこう報じている。
〈今の日本で値上げを敢行するのは、とても勇気のいることだ。長引く不況で消費者物価指数は20年近く上がっていない〉
〈普通はどこの国でもコスト高による10円程度の値上げであれば消費者の理解が得られるものだが、今の日本のデフレ状況では値上げすることもためらわれる〉
この値上げに至るまでにガリガリ君を製造する赤城乳業は「8年も社内で議論した」と紹介。森永氏のいう「文化の象徴」ではなく、「デフレの象徴」として紹介されているのだ。これには赤城乳業の広報部も困惑を隠せない。
「17日に取材に来られて記事が掲載されることは知っていましたが、1面になるとまでは知りませんでした。GDPの発表に合わせたみたいですね。ただ、日本のデフレの象徴として取り上げられてしまったことに関しては何とも……」
今回の値上げは実に「25年ぶり」のこと。むしろバブル期から変わらず同じ値段を貫いてきたのが驚きなのだ。
おそらくNYタイムズの記事はCMのインパクトによるものだ。値上げに際して、赤城乳業の幹部と社員が100人近く並んで「謝罪」するテレビCMを放送し、話題を呼んだ。日本では、「値上げをエンターテインメントにして面白い」との評だったが、この「謝罪」をNYタイムズは真に受けてしまったのではないか。
ただ値上げ以降、ガリガリ君の売り上げはむしろ10%増えたという。今回の報道でさらに売り上げアップに期待?
※週刊ポスト2016年6月10日号