NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』。日々を大切に生きる常子を中心とした小橋家の奮闘ぶりが描かれるが、そんな一家を“声”で温かく見守っているのが「語り」を務める檀ふみさんだ。
いち早く台本を読んでいるナレーションの担当として、また、いち視聴者としても、毎日その放送を楽しみにしているという檀さん。そんな檀さんが考える『とと姉ちゃん』の魅力はどこにあるのだろう。
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『とと姉ちゃん』はとにかく脚本がものすごく面白い。最初に脚本を拝読した時も、次の展開が気になって仕方がないくらいでした。ヒロインの常子をはじめとして、描かれているキャラクターがみんなとっても素敵なんです。
だから脚本を読みながら、みなさんのいろんな役を自分でもやって楽しんでいる感じですね。印象に残っているのは、大地真央さん演じる青柳商店の女将さん・滝子の「客が木曽檜と言ったら、木曽檜を渡さなきゃダメなんだ」というセリフ。これ、早口言葉のようで難しくて私は言えないかもと思っていたんですが、後で演出家のかたに伺ったら「大地さんは難なくおっしゃっていましたよ」と。さすがというか、私はまだまだ修業が足りないなと(笑い)。
とくに惹かれるのは、「とと」と「かか」の“家族の作り方”です。小橋家には「朝の食事は家族全員でとる」「自分の服は自分で畳む」「月に一度、家族全員でお出かけをする」という家訓があり、それらを守りながら何気ない日常を一瞬一瞬、楽しんで生きている。決して豊かではないけれど言葉遣いはきれいだし、非常にしつけがよくて、玄関でもちゃんと振り向いて下駄を揃え直すということが受け継がれている。そういうところがとても素敵ですね。
実は私が幼い頃、わが家にも似たようなルールがありました。「父がいる時は家族全員で食事をとる」「食事の途中で席を立たない」「ニコニコ楽しく残さず食べる」。父もよく料理をしましたが、使うのは私の嫌いな食材ばかりだったので、最後の家訓はちょっと拷問のようでしたけど(笑い)。
私に限らず、『とと姉ちゃん』を見ながら、自分と小橋家の家族の誰かを重ねている人も多いのではないでしょうか。「自分は常子だ」と感じる人もいるだろうし、直情径行の姉を引き留める役回りの次女・鞠子の人も、マイペースの三女・美子タイプもいる。誰もが家族の姿に共感できるドラマだと思います。
実際の放送は、私、朝寝坊なので(苦笑)、昼か夜の放送には必ず見ています。ナレーションのチェックというよりは、どんな物語になっているのかが楽しみで。わくわくしながら見ています。
ナレーションのない回もあるんですが、実をいうと、そういう回のほうが面白いんです。大変な事件や出来事があるとナレーションがいらなくなるからです。いちばん緊迫した部分に出番がないというのは、ちょっと残念でもありますけど。
※女性セブン2016年6月16日号