ビジネス

同一労働同一賃金 実現なら誰にとってもシビアな状況に

雇用形態の区別なく責任の対価が求められる(写真:アフロ)

 安倍政権が掲げる「1億総活躍社会」の実現に向けたプランには、ブラック企業で問題視される長時間労働の是正や、保育士・介護職員の賃金アップなどが盛り込まれているが、首相自ら「待ったなしの課題」と強調するのが〈同一労働同一賃金〉だ。

 職務や仕事の内容が同じならば、正社員と非正規社員(パート・契約・派遣社員)の雇用形態にかかわらず、同じ賃金を支払うべき──これが同一労働同一賃金の考え方だ。現状、正社員に対する非正規労働者の賃金水準は約6割だが、これを欧州並みの8割程度まで縮めることを目指している。

 しかし、長らく終身雇用、年功序列といった雇用システムの中で賃金体系も決めてきた日本企業で、ましてや正社員の立場すら危うくさせかねない同一労働同一賃金を実現させることなど本当にできるのか。企業現場では早くも大きな議論が沸き起こっている。

『しゅふJOB総合研究所』が働く主婦719名を対象にした意識調査(5月25日発表)によると、雇用形態によって時間あたりの賃金(時間給)に「不公平さを感じる」と答えた人は77.9%もいた。ところが、「同一労働同一賃金が実現することを望みますか」との設問には、「望む」と答えた人が30.3%しかおらず、「わからない」と答えた人が44.8%に上った。

 まだ、どんな新ルールが出来上がるかも不透明なため、同一労働同一賃金にすべきと声を大にしきれない面があったのかもしれない。それでも、同アンケートで抽出されたフリーコメントでは、非正規社員の主婦でも賛否さまざまな意見があり興味深い。

【賛成派】
●仕事内容・雇用形態等において、いかなる状態であっても仕事に対する責任の重さは同じだと思う。どの部署であっても必要な仕事だと思う(57歳 パート/アルバイト)

●短時間勤務の場合の時給が安くなるのが不公平だと感じる。フルタイムでも短時間でも、1時間あたりにやる仕事がまったく同じならば、時給も同じにすべき(45歳)

【反対派】
●同じ内容の仕事をしていても、その成果に差があれば賃金の違いが生じるのは仕方がない(49歳 パート/アルバイト)

●正社員は縛られる度合いが高く、会社とともに成長していくという点で責任感があります。そこを汲まずに同一賃金化していくと、正社員である意味がなくなるし、責任感をもって仕事をする人が減ります(45歳 パート/アルバイト)

 さて、日本企業はこうした現場の声にも耳を傾け、同一労働同一賃金を制度化させられるか。人事ジャーナリストの溝上憲文氏は「企業労使の問題でもあり、かなりの時間がかかる」と予測し、こんな見解を述べる。

関連記事

トピックス

中学時代の江口容疑者と、現場となった自宅
「ガチ恋だったのかな」女子高生死体遺棄の江口真先容疑者(21) 知人が語る“陰キャだった少年時代”「昔からゲーマー。国民的アニメのカードゲームにハマってた」【愛知・一宮市】
NEWSポストセブン
すき家がネズミ混入を認め全店閉店へ(左・時事通信フォト、右・HPより 写真は当該の店舗ではありません)
【こんなに汚かったのか…】全店閉店中の「すき家」現役クルーが証言「ネズミ混入で売上4割減」 各店舗に“緊急告知”した内容
NEWSポストセブン
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
X子さんフジ退社後に「ひと段落ついた感じかな」…調査報告書から見えた中居正広氏の態度《見舞金の贈与税を心配、メッセージを「見たら削除して」と要請》
NEWSポストセブン
ロコ・ソラーレが関東で初めてファンミーティングを開催(Instagramより)
《新メンバーの名前なし》ロコ・ソラーレ4人、初の関東ファンミーティング開催に自身も参加する代表理事・本橋麻里の「思惑」 チケットは5分で完売
NEWSポストセブン
江口容疑者と自宅
《16歳女子高生の遺体を隠し…》「6人家族だけど、共働きのご両親が不在がちで…」江口真先容疑者(21)が実家クローゼットに死体を遺棄できた理由
NEWSポストセブン
中居氏による性暴力でフジテレビの企業体質も問われることになった(右・時事通信)
《先輩女性アナ・F氏に同情の声》「名誉回復してあげないと可哀想ではない?」アナウンス室部長として奔走 “一管理職の職責を超える”心労も
NEWSポストセブン
濱田淑恵容疑者の様々な犯罪が明るみに
【女占い師が逮捕】どうやって信者を支配したのか、明らかになった手口 信者のLINEに起きた異変「いつからか本人とは思えない文面になっていた」
週刊ポスト
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
「スイートルームの会」は“業務” 中居正広氏の性暴力を「プライベートの問題」としたフジ幹部を一蹴した“判断基準”とは《ポイントは経費精算、権力格差、A氏の発言…他》
NEWSポストセブン
大手寿司チェーン「くら寿司」で迷惑行為となる画像がXで拡散された(時事通信フォト)
《善悪わからんくなる》「くら寿司」で“避妊具が皿の戻し口に…”の迷惑行為、Xで拡散 くら寿司広報担当は「対応を検討中」
NEWSポストセブン
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”4週連続欠場の川崎春花、悩ましい復帰タイミング もし「今年全休」でも「3年シード」で来季からツアー復帰可能
NEWSポストセブン
騒動があった焼肉きんぐ(同社HPより)
《食品レーンの横でゲロゲロ…》焼肉きんぐ広報部が回答「テーブルで30分嘔吐し続ける客を移動できなかった事情」と「レーン上の注文品に飛沫が飛んだ可能性への見解」
NEWSポストセブン
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ
「スイートルームで約38万円」「すし代で1万5235円」フジテレビ編成幹部の“経費精算”で判明した中居正広氏とX子さんの「業務上の関係」 
NEWSポストセブン