東日本大震災の発生から5年以上が過ぎた今も、韓国では原発事故を理由とする“福島アレルギー”が根強い。韓国政府が続ける福島をはじめ、青森、岩手、宮城、栃木、茨城、群馬の8県に対する根拠なき「水産物禁輸」政策が、それに拍車をかけている。フリーライター、張赫氏がレポートする。
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今年3月には、韓国の複数の市民団体が、ソウルの日本大使館の関連施設の前で、日本酒イベントの開催を中止するよう訴えるという騒動が起きた。
同イベントは「ソウル酒フェスティバル2016」と題し、韓国地酒輸入業協会中央会が主催。日本から日本酒や焼酎の蔵元約100社が参加し、400種類以上の日本酒の試飲ができるもので、海外で開かれる日本酒イベントとしては過去最大規模だという。
そこに岩手、宮城、茨城、栃木、群馬の酒造会社が含まれていることから、韓国の11の市民団体が、福島第一原発の事故を踏まえ、「(放射性物質の)汚染被害が完全に収束していない地域の米と水で作った酒の安全性に、懸念がないとはいえない」と主張した。
韓国国民の不信感がどれだけ根強いかは、これまでの世論調査でも明らかになっている。韓国の野党「正義党」と「子どもたちに核のない世界のための国会議員研究の集い」が2013年8月に実施したアンケートでは、96.6%が日本産食品を安全でないと回答。
韓国消費者院が2014年9月に実施したアンケートでは、92.6%が「日本の原発事故後の放射能流出が韓国に影響を及ぼした」と回答。韓国消費者が心配しているものについての回答では、1位が日本の水産物の汚染(52.9%)、2位が日本の農水産物の汚染および食品輸入(18.5%)だった。
こうした世論は、事故から5年以上が過ぎた今も変わらないのだろうか。韓国の大手紙記者は本音をこう吐露する。
「福島原発事故があってからは、日本のビールは飲んじゃいけないなんて話も出回っていたほど。今では当時ほど敏感ではないけれども、やっぱり日本食の寿司には昔ほど手が伸びなくなりましたね」
長年、日本に住む30代の韓国人女性は「やはり、日本産の食品については、避ける傾向が強いと思います。ある市民団体が日本の水産物を検査した内容を公開したり、福島県の現在をまとめた日本の特別番組が韓国で放送されたこともあり、より不信感が強まっているのが実情です」と語る。
※SAPIO2016年7月号