「せこい、小さい、哀しい」、「公私混同の極み」、「同じ画面に映ると票が減る」──これらは参院議員の片山さつき氏が放った、元夫・舛添要一東京都知事への言葉である。そんな折、片山氏にも政治資金を巡る「せこい」疑惑が持ち上がっている。
平成25年上半期の「片山さつき後援会」の政治資金収支報告書によれば、同会の支出には出版社の「オークラ出版」へ43万2000円を2回、50万4000円を1回の計136万8000円を支払っているという記録がある。片山氏は、2012年11月にこの出版社から『正直者にやる気をなくさせる!? 福祉依存のインモラル』という著書を刊行していた。
「この金額から考えて、定価の8掛けで自著を買い取っている可能性がある。税込定価900円(当時)から20%引きの1冊720円で買い取ったとすると、合計で1900冊にもなります」(出版関係者)
これまでも政治資金での自著買いで、批判を浴びた政治家はいた。
2011年には経財相だった与謝野馨氏が自著を8000冊、2014年4月には安倍晋三首相も自著を2000冊購入していたことが発覚。さらに、昨年11月には民主党(当時)の参院議員・小西洋之氏も自著を1600冊購入していた。
また舛添都知事も、自著を100冊買ったことを指摘されたが、「都政の資料として配布した。問題ない」と反論している。
それが政治活動の一環であれば問題ないのだろうが、自著を“爆買い”することは、政治資金の正しい使い途といえるのだろうか。
出版元のオークラ出版に聞いたところ「社長以下、当時の担当者が退社しているので事情はわかりかねる」との返答だった。片山氏はこう説明する。
「本は生活保護改革についてまとめたもので、パーティ券を買ってお越しになった方へのお土産としてわたしました。(本の内容は)政治活動そのもの。党本部のチェックでも問題ないといわれている。印税率は通常率と同じで1割だと記憶。普通に所得として申告しています」
本当に問題はないのか? 政治資金に詳しい神戸学院大学法学部教授の上脇博之氏はこう指摘する。
「政治資金で政策研究のための書籍を買うのは許されていますが、自分が書いた本を1900冊も買う必要性はないでしょう。もし印税が著者に入るのであれば、政治資金で大量購入すべきではない。また、パーティ以外で選挙区内の人に無償で配った本があれば、公選法が禁止する寄付行為に該当する可能性もある」
ちなみに同書は重版出来とはいかなかったようだ。
※週刊ポスト2016年6月24日号