参院選は与党vs野党の対決ばかりではない。東京、神奈川、愛知、大阪など定数が4以上の選挙区では、同じ政党の候補者が複数出馬。各党内では「最大の敵は味方だ」と激しい内ゲバが始まっている。
「敵に勝つより、味方の基礎票を奪わなければならない」のは自民党だけでなく民進党も同じだ。とくに愛知選挙区(改選4議席)では、自民党が候補を1人に絞って当選圏入りを固め、民進党が2人を立てて公明、共産と激戦中だ。
民進党は愛知県教組出身の現職・斎藤嘉隆氏に加えて、公募で選ばれた新人で2児の母、伊藤孝恵氏を擁立。応援に駆けつけた蓮舫氏は「政治に携わったことのない1人の女性が政党の候補者公募に手を上げることがどれだけ勇気がいることか」と声を張り上げた。
とはいえ、愛知で勝敗を分けそうなのは労働組合票、とくにトヨタ労組の動向が大きい。実は、すでに労組票の分配は決まっているのだという。地元の民進党議員が語る。
「最も多い自動車総連の票は2人で分けることになったが、トヨタは斎藤氏、伊藤さんは愛知に工場がある三菱自工などトヨタ以外という配分が決まった。しかし、三菱自工は選挙どころじゃない。だから地元議員は伊藤さんに同情的だ」
やはり激戦の大阪選挙区(改選4議席)で「台風の目」になりそうなのが、おおさか維新が2人目の候補として擁立した高木佳保里氏だ。
高木氏は堺市の元自民党市議で、維新の看板政策「大阪都構想」反対の急先鋒として知られていたが、それが一転、おおさか維新にスカウトされて参院選に出馬が決まったのだから自民党は唖然呆然。同党大阪府連幹部はこう警戒する。
「うちは必勝を期して現職の北川イッセイ氏に降りてもらい、外交官の松川るい氏を立てた。2人の娘のママというのがセールスポイントだ。ところが、おおさか維新は年齢もほぼ同じで2人の子どもがいる高木氏をぶつけてきた。明らかに松川氏の票を強奪しようという作戦だ」
これで大阪選挙区はおおさか維新2人、自民、民進、公明、共産の有力6候補の混戦状態となるが、おおさか維新ナンバーツーで現職の浅田均・政調会長は高木氏と票の奪い合いになる。維新系の地方議員が語る。
「浅田氏は候補が1人なら楽に当選できるはずだったのに、高木氏に票が集まればババをひかされないとも限らない」
大勢の見えている参院選で楽しみなのは内ゲバくらいか。
※週刊ポスト2016年6月24日号