遅きに失した舛添要一・東京都知事の辞任表明と同時に、出直し都知事選の号砲が鳴った。
「出るつもりはありません」──真っ先に不出馬表明したのは“櫻井パパ”こと桜井俊・前総務事務次官だ。
人気グループ嵐の櫻井翔の父親で、高い知名度が期待できるとあって霞が関や安倍側近の一部で待望論が上がり、本誌前号で出馬説を報じたことから、ワイドショーが一気に飛びつき有力候補に急浮上。だが、「息子の七光り」を嫌った本人は機先を制して辞退を明言したのである。
それならと官邸内では、長く外交政策の腹心だった斎木昭隆・前外務次官の夫人で、外務省国際法局長の尚子氏や、村木厚子・元厚労事務次官の名前が候補として挙がった。安倍晋三・首相に近い都連幹部は語る。
「舛添さんの政治資金問題は、政治団体を持つ政治経験者ならば大なり小なりあり得る話。そこで、官邸サイドは政治とカネの心配がない女性官僚出身がいいと考えているようだが、知名度が低いため野党が有力候補を立ててきたら圧倒的不利」
官邸も自民党も、後任候補が全く固まらないまま、舛添批判の高まりが参院選に波及したため、見切り発車で都知事更迭に走らざるを得なかったことがわかる。
その自民党が都知事選の「仮想敵」と見ているのが民進党の蓮舫氏だ。6年前の参院選東京選挙区では2位にダブルスコア以上の約171万票を獲得してトップ当選し、自民党の今回の参院選情勢調査でも「東京の首位を走っている」(選対)という。
蓮舫氏の集票力は2014年の都知事選で舛添氏が獲得した211万票(次点の宇都宮健児・元日弁連会長は約98万票、3位の細川護熙・元首相は約96万票)に匹敵し、出馬となれば自公にとって最大の強敵になる。民進党東京都連内でも“本命”の蓮舫氏出馬に期待が高い。都連の選対スタッフが語る。
「正直言って参院選は蓮舫以外は大苦戦。だから勢いのある蓮舫が都知事選に出馬して盛り上げてくれたら全体の底上げにつながり、劣勢を吹き飛ばすチャンスになる。
参院選での蓮舫氏の1議席は確実だから、比例に回して当選した後、すぐに都知事選に鞍替えさせるのも不可能ではないが、そんなことをすれば、安倍首相から『1粒で2度おいしいセコイ作戦』と批判されるのは目に見えているし、他の野党からもクレームが来る。それが悩ましい」
※週刊ポスト2016年7月1日号