今年最大のIPO(新規公開株)として注目を集めるLINE。7月15日の東京とニューヨークの証券取引所上場時に想定される時価総額は約6000億円ともいわれている。証券アナリストで、つばめ投資顧問代表の栫井(かこい)駿介氏が興奮気味にいう。
「上場決定後、関連株価も上昇するなど、証券市場を活性化しています。スマホユーザーの9割がLINEを利用しているという調査結果もあり、IT企業としてはヤフージャパンや楽天に次ぐ大型上場に、投資家たちは大いに注目しています」
LINEとは、スマホでメッセージのやりとりや通話を楽しめる対話アプリのこと。メッセージのやりとり中にイラストなどで感情を伝えられる「スタンプ」が人気となり、爆発的な支持を受けた。最近はさらに音楽や動画、ニュース配信などさまざまなサービスを展開、事業を拡大している。
急成長するIT企業を見て、「日本発のITベンチャーの成功例」と捉える向きもあるが、実態は少し複雑だ。『ヤバいLINE』(光文社新書)の著者でジャーナリストの河鐘基(ハジョンギ)氏がいう。
「LINEは韓国IT大手『ネイバー』の子会社です。このネイバーは韓国でトップシェアを誇るポータルサイトで、日本でいえばヤフージャパンのような存在。2000年には、『ハンゲームジャパン』の社名で日本市場に主に検索分野で進出しましたが、まったく浸透せず何度か撤退しています」
しかし、その後、再び日本市場に目を向け、2010年には、かつて堀江貴文氏が社長だった『ライブドア』を買収。転機が訪れたのは翌年のことだった。
「2011年6月に『LINE』をリリースした。きっかけは同年3月に起きた東日本大震災でした。ちょうど震災時に日本にいたネイバーの会長が非常時における通信インフラの必要性を感じ、便利でつながりやすいコミュニケーションツールとして開発を後押ししたといわれています」(河氏)
LINEは日本で成長した企業ではあるが、新規上場の際に提出が義務づけられている有価証券届出書を見ると、純粋な“日本企業”とは言い難い。
届出書の〈株主の状況〉を見ると、87.27%を親会社のネイバーが握り、LINE取締役のシン・ジュンホ氏が5.12%で次点となっている。社長の出澤剛氏ですら、持ち分は0.05%に過ぎない。