国民投票で英国の欧州連合(EU)離脱が決定的になったことで、香港の大富豪、李嘉誠・長江実業グループ会長が株式上場していた4企業の株価下落で714億香港ドル(約9400億円)もの損失をこうむり、「華人で最も損害を受けた人物」になったことが分かった。中国紙「新京報」が報じた。
李氏は同企業グループの資産の3分の1を英国に投資しており、今回の国民投票の結果によって、そのビジネス展開が裏目に出た形だ。李氏が中国本土に展開していたスーパーマーケットやショッピングセンターなど大型不動産物件を軒並み売却するなど、中国離れを強めていたことに強い批判が出ており、今回の資産消滅で中国では溜飲を下げたような報道が目立っている。
李氏はグループ内の携帯電話事業で英国での営業認可を申請したり、英国内の不動産を買い占めるなど、ここ数年、英国でビジネス展開に力を入れていた。
李氏のグループ会社が手掛ける英国事業は不動産や港湾、小売り、通信、都市ガス、水道など幅広く、英国への投資額は香港ドル換算で累計4000億香港ドル(約5兆4000億円)となっている。
ところが、グループの主要企業である長江基建や電能実業、長江実業地産、長江和記の4企業が軒並み5%以上も株価が下落し、714億香港ドルの株価が一夜で消滅した。さらに、ロンドン市場に上場している企業もあり、その損失は今後、大きく膨らむとみられる。
李氏はこれまでビジネスでは「先見の明がある」と言われ、40年来、毎年黒字決算を続けてきたが、今期は赤字に転落する可能性が強まっている。
また、今年初めに発表された長者番付では、これまで20年以上も保持してきた中華圏のナンバー1の座を中国の王健林・大連万達集団会長に譲り渡しものの、香港ではずっとナンバー1の座を維持してきた。
しかし、今回の英国事業の失敗により、「李嘉誠神話」にも陰りが見えており、ネット上では「中国から撤退して、英国でビジネスの軸足を移したのが失敗の元。中国を見限って天罰を受けた」「李嘉誠が成功したのは中国のおかげなのに、中国を裏切ったことで墓穴を掘った」などと李氏の「中国離れ」を冷笑するようなコメントが目立っている。